今の前提は、全く見知らぬ他人同士。これと同じことが、兄弟間や親族間で起こるというのは、そこに、「お互いへの想い」も「財産を遺してくれた方への想い」も、こもっていないからです。
財産が単純にお金だけ、しかも関わり方までまったく同じ、というのであれば、文字通り半分ずつ、「平等に」分ければ良いでしょう。しかしそんな状況は現実的にはほぼありません。
実際の相続では、財産にはいろんな種類があります。預貯金のほか、たとえば先祖から受け継いだ自宅の土地だったり、色んな想いが詰まった家だったり、設立して育ててきた会社の株式だったり…。
そして関係性もさまざまです。「仲が悪い」という極端な話だけじゃなくて、例えば、自宅を守ってほしい子供、一緒に会社を育ててくれた子供、嫁ぎ先で苦労をしているように見える子供、自分の人生を削って介護してくれた子供、可愛い孫を育ててくれた子供…。
それぞれが違った人生を生きてるんです。だから、それぞれに対して「まったく同じ想い」ということもないはずです。それは、「誰かが上で誰かが下」という、1つの物差しで測れるものでもないでしょう。
そして、他人が計れるものでもないし(万が一もめて裁判になったら、ある程度は計られますが)、「正解」なんてないです。
もちろん、「一番税金を安くする方法」という意味での正解や、「法律上最大限主張できる権利」という意味での正解は存在します。
色々と悩んだうえで、「では法律の配分に従おう」というのも1つ。「税金が一番安くなる方法で」というのも1つ。そして、「金額的には平等じゃないけれど、こういう配分でのこしてあげたい」というのも、もちろん1つなのです。
そういった想いを円満に実現するためには、やはり「想いの共有」。これは不可欠です。「言わなくても伝わる」なんてことはないです。本当に大事なことこそ、伝えなければ伝わりません。
当たり前ですが、相続が起きてしまってからでは伝えられません。相続が起こる前であっても、認知症等になってしまえば、伝えるのも難しいです。そしてお元気じゃなくなってからの話では、「現実的過ぎる」という問題もありますし、現実的なものとなった以降にこういう話をするのは、元気なうちに話すよりも何十倍もの気力が必要です。
年末年始、ご家族が集まる機会に、すこしだけでもこういった話もしてみてはいかがでしょうか。想いをしっかり伝えて、それを共有することで、もめてしまう相続が1件でも減ることを願っています。
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『こころをつなぐ、相続のハナシ』
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