自衛隊機だけの責任なのか? あわや大惨事の那覇空港トラブルを検証する

ooishi20150605
 

民間機2機と自衛隊機があわや衝突、という重大インシデントが発生した那覇空港。このトラブルについて、作家で航空機全般に詳しい大石英司さんはメルマガ『日刊 大石英司の代替空港』で、現在明らかにされている限られた情報を、専門知識と照らし合わせながら詳しく分析しています。

「管制にミスはない」とメディアに書かせる国交省の酷い欺瞞

那覇空港トラブル 国交省「管制にミスない」 JTA機への指示時期修正

未だに、その時、管制塔に何人いたのかの情報がないのは、国交省記者クラブの記者が無知だから? それとも一番核心の部分だから、当事者である国交省が箝口令を敷いているということだろうか。徳島のインシデントでは、防衛省はさっさと情報を出したのに。

昨日の時点で解ったことは、まず、管制は、空自機の存在(離陸)を全く把握していなかった、ということです。それはトランスオーシャン機へのゴーアラウンドが滑走路に入った後であることを認めたことで明らかです。離陸許可を出していないんだから、存在を認知していないのも仕方無い部分はありますが。

恐らく管制は、滑走路上で全日空機が止まった時に、何が起きたんだ? 何で止まったんだ? でまごついている間に、トランスオーシャン機が入って来て慌てたということでしょう。この時点で、管制官の頭の中には、空自機もいなければ、実はトランスオーシャン機すら存在しなかった。

トランスオーシャン機が降りる前に着陸復航したら、むしろ空自機と衝突する危険があったのでは? という指摘もありますが、危険性という意味で言えば、当然、その危険性はあったと思います。ただ、タイミング的には、空自機はすでに滑走路上を横切った後で、しかもものはヘリだから急に高度は上げられない。やや左へ抜けるよう指示すれば、旅客機の性能なら、余裕をもって回避できたでしょう。

そして空自機の問題です。昨日明らかになったもう1つの情報は、管制は空自機に対して、1回ホールドを指示している。で空自機側は、機長も副操縦士も、それを聞いたと証言している。所が、その後の離陸許可に関して、機長も副操縦士も、「離陸許可を貰った」と勘違いしている。本当に、2人供勘違いしたのか?

ここでひとつ鍵になるのは、その時、タワーとの無線を担当していたのは、正副どちらのパイロットだったかです。2人供無線をモニターしていて、無線には必ず頭にコールサインを付けてやりとりしているのに、2人供錯覚したという事実は、あり得なくはないけれど、可能性としては低い。

仮にその時、機長が無線を担当していたとしたら、副操縦士は、あれ? と思った可能性がある。自分は、離陸許可は出たっけ? と疑問に感じたのだけれど、機長はそういうから、強い疑問には感じなかったし、機長にも言わなかった、という可能性がある。

となると、これは自衛隊航空のCRM(クルー・リソース・マネージメント)が問われる重大な問題に発展する要素があるでしょう。

いずれにしても、本来なら昨日のうちに出ているべき情報が出て来ない。国交省が当事者になったせいで、情報統制が敷かれているのはけしからん話です。一方で、当事者たる国交省が早々と「管制にミスはない」とメディアに書かせるのは、酷い欺瞞だと言わざるを得ない。

image by: Wikipedia

『日刊 大石英司の代替空港』2015.6.6号より一部抜粋

著者/大石英司
作家、鹿児島県出身、川崎市高津区在住。国内外の注目ニュースに関して alternative な視点を提供するメルマガはビジネスマンなら必読です。
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