理由3 ~修正されたアメリカ外交
オバマさんがもっとも批判されるのは、「外交分野」です。実際、「アメリカの権威を失墜させること」をしました。もっとも記憶に残っているのは、2013年9月の「シリア攻撃ドタキャン事件」でしょう。
2013年8月、オバマさんは、アサド軍が「化学兵器をつかったこと」を理由に、「シリアを攻撃する!」と宣言した。しかし、翌9月、「やっぱやめた!」と戦争を「ドタキャン」し、世界を仰天させました。
さらに、オバマさんは、ウクライナの政治に関与し、親ロシア・ヤヌコビッチ政権転覆を支援しました。これ、トンデモ系に思えますが、オバマさん自身が関与を認めています。
昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。
CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。
このクーデターで、プーチン・ロシアは、「クリミア併合」を決意した。そして、ウクライナ内戦が勃発した。シリア、ウクライナ、そして、オバマさんも「失敗」と認めている「リビア攻撃」(2011年)。「オバマ外交」は「失敗だらけ」と言っていいと思います。
しかし、2015年3月の「AIIB事件」後、オバマさんは、突如「偉大なリアリスト」に変貌した。そして、「ほとんどすべての問題」を解決したのです。
- ウクライナ内戦は、2015年2月の「ミンスク合意」により事実上終結。
- イラン核問題は、2015年7月の合意で、事実上解決。対イラン制裁は、解除された。
- シリア内戦は、2016年2月の米ロ合意で、事実上終結。
- オバマ、2016年3月、キューバを訪問し和解。
そして、もうすぐ広島を訪問し、日本国民の「歴史的恨み」を解く。こう見ると、「どこがリアリズムだ? ただの理想主義じゃないか?」と思えます。
いえいえ。
オバマさんの動きは、「世界中の国々と、とにかく仲良くしたい」ようにも見えます。しかし、(北朝鮮と)中国との和解は、全然模索していないのです。これは、どういうことでしょうか?
アメリカはこれまで、3つの地域で戦っていた。すなわち、
- アサド、IS問題のある中東
- ウクライナ、ロシア問題のある東欧
- 東シナ海、南シナ海問題にかかわる中国
しかし、いくらアメリカでも、「3つの戦いを同時にする」なんて「非効率」なわけです。だから、中東問題、ウクライナ問題を解決し、中国問題に焦点をあわせている。「これぞ、リアリズム外交」なのです。
次の大統領がトランプさんになるかヒラリーさんになるかわかりませんが。賢明な「オバマ外交」が継承されることを心から望んでいます。
というわけで、
- 「リアリズム外交」で、中国への逆襲を開始し始めた。
これが「オバマさんが偉大である」第3の理由です。歴史がオバマさんの功績を正しく評価することを願います。
image by: Drop of Light / Shutterstock.com
『ロシア政治経済ジャーナル』
著者/北野幸伯
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