中国を激怒させた安倍総理、南シナ海判決での「挑発」は正解なのか?

 

ポイントは、「私」か「私たち」か?

私は常々、「日本は、アメリカ以上に中国を挑発すべきではない」と書いています(アメリカは、しばしば梯子を外す。例:ロシアバッシングの駒として使われたジョージアやウクライナ。サウジアラビア、イスラエルも捨てられた)。

今回安倍総理は、ASEMという国際舞台で、堂々と中国を挑発」しました。私は挑発をお勧めしませんが、挑発の「仕方」はよかったと思います。

なぜでしょうか? 安倍総理の論理が、真っ当で正義だからです。総理の主張は、国際司法機関である「仲裁裁判所の判断を重視しましょう」ということです。この論理に反対できる人は、誰もいません。

一方、中国の主張は何でしょうか?そう、「南シナ海は、誰が何と言おうと『私』(=中国)のものです。国際司法機関がどんな判決を出しても、知ったこっちゃありません!」。

安倍総理と中国の主張、どっちが正しいか、一目瞭然でしょう。安倍総理の主張は、「私たち」であり、中国の主張は」です。皆さんの会社でもそうでしょう? ある人が、自分勝手な主張をし、会社全体を敵にまわした。その人が勝利したことありますか?

日本もかつて、今の中国と同じ間違いを犯しました。そう、「満州国は私(日本)だけのものです!国際連盟加盟国が全部反対しても、関係ありません!」。確かに、満州は、しばらく日本だけのものでした(いろんな民族の人が移り住み、経済発展もしたが、実権は日本人が握っていた)。しかし、長くなかったですね。

日本と中国、どっちが有利?

仲裁裁判所で勝利したフィリピンや、東南アジア諸国、欧州があまり「反中」で盛り上がらない。それで、「孤立しているのは逆に日本だ!」という人がいます。

しかし、「南シナ海は全部俺のものだ!」と主張する中国、「仲裁裁判所の判決を尊重しましょう」と主張する日本。これで日本が孤立するはずはありません。盛り上がりがイマイチなのは、「距離」の問題です。

距離」とは何でしょうか? 欧州は南シナ海から遠いので正直どっちでもいいのです。日本だって、「遠い」ウクライナとかシリアとか、正直関心ないでしょう? だから、メルケルさんが、眠そうにしていても仕方ありません。

アジア諸国は、第1に中国が怖いし、第2にチャイナマネーが欲しい。だから盛り上がりにかけても仕方ありません。それでも大切なのは、誰にも反論できない、「私」ではなく「私たち」(国際社会の利益になる主張を続けることです。

「日本は、仲裁裁判所の判決を尊重するように主張しているから、『制裁しよう!』」とは決してなりません。人間社会でも、国際社会でも、同じですね。「エゴで突き進むと潰される」。日本も気を付けたいものです。

image by: 首相官邸

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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