日本企業の世界進出は、素晴らしき日本文化を拡散するための先兵だ

 

精神文明のレベル

しかし、精神文明には、そのレベルがある。心のありようが精神文明のレベルを決めている。今までは、精神文明社会ではなく、科学技術文明の時代であったことで、精神文明のレベルを意識しないで来れたが、今後は美意識や無想の境地など精神文明のレベルが問題になる。

すると、まず、美意識より人間という生物の食べることなどの基本機能が優先する社会があり、発展途上国がそれに当たる。レベル0とする。衣食住を整備する社会の段階である。

次に、基本機能が満足すると、豪華さやきらびやかさなどの刺激的な美意識が優先する社会になる。新興国がそれに当たる。レベル1とする。

次に、個々の豪華さではなく、町全体の統一感や自分の趣味全体の統一感などの美意識が出てくる社会になる。欧米諸国がそれに当たるが、デザインの時代ともいえる。この社会をレベル2とする。

次に、簡素な美を求めだす。わびさびの世界であり、この世界に達したのは、鎌倉時代以降の日本と中国の唐・宋時代しかない。この社会をレベル3とする。

室町時代に画僧の雪舟が遣明使として中国の明に渡るが、内検の心を持った水墨画がなく、がっかりして、唐や宋時代の水墨画を写生したという。明時代には簡素な美はなくなっていたことを示している。

逆に、雪舟は中国でわびさびの絵画を作成したが、それを現代中国が内検の心の作として見直している。内検の心とわびさびはほとんど同一であるが、雪舟の絵画は、日本でもわびさびの絵画の代表的な存在である。

簡素な美とは、人間が美的な刺激ではなく、静的な内面を見つめることで出てくるが、この意識がないと自己の無想の境地にはなれない。精神的な安らぎを求めると、この段階になる。

ということで、無想の境地を実現すると、その派生効果で簡素な美を求めることになる。そして、無想の境地を美術にしたのが、禅の美術であり、それを欧米も受け入れ始めたので、このレベル3社会への移行期にあるような気がする。

伊万里焼と鍋島焼が良い例である。同じ窯元が欧州への貿易品としては、赤や金を配した豪華な伊万里焼を造り、幕府や大名への献上品としては鍋島焼という青絵の簡素な陶器になる。この時代の好みがわかるが、日本はすでに簡素な美の時代になっていたことがわかる。

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