30年ひたすら増収増益。ニトリの「異常すぎる」快進撃の背景

 

果たしてニトリは売上高3兆円企業になれるのか?

2032年には店舗数を3,000店舗まで拡大し、売上高3兆円企業を目指すニトリですが、果たして本当に3兆円の売上高を達成することができるのでしょうか?

2017年2月期の売上高は、家具・インテリア小売業の中で圧倒的な規模を誇りますが、それでもまだ5,000億円程度。残り15年で6倍の成長を実現させなければなりません。

ただ、確かに現状のニトリにとってはかなり高いハードルに思われますが、達成不可能なレベルと結論付けるのは早計でしょう。

そう、世界の家具・インテリア小売業界では、すでにIKEAが2016年度の決算で4兆円を大幅に超える売り上げを記録しているのです。

もちろん、日本の家具・インテリア小売業のみでは市場規模から見ても3兆円は恐らく達成不可能な数字だと思われますが、ビジョンに描いているように、「世界の多くの人々の豊かな暮らしに貢献し世界A級の暮らしを提案できる企業」に進化することができれば決して夢物語ではないともいえます。

つまり、IKEAと同じように、世界の多くの国々で成功を収めることができれば、自ずとビジョン達成が近づくことになるのです。

もし、ニトリが今後益々グローバル化を推し進めていくのなら、すでにグローバルマーケットで大きな成功を収めているIKEAとの争いは避けて通れないかもしれません。

日本市場においては、ニトリの5,129億円(2017年2月期)に対してIKEAは767億円(2016年8月期)と6倍以上の売り上げ規模を誇りますが、グローバルレベルで比較すると4兆2,205億円のIKEAとは逆に8倍を超える開きがあることを考えれば、現状は正面から戦っても勝てる相手ではありません。

それではここで今後のニトリのグローバル戦略を予想すべく、グローバルマーケットで最強のライバルと成り得るIKEAとの比較を行ってみることにしましょう。

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【店舗数】

まず、店舗数ですが、現状ニトリが471店に対して、IKEAは340店しかありません。それぞれ、日本、ヨーロッパなど本拠地での店舗数が大半を占めていますが、IKEAが28カ国に展開しているのに対してニトリは日本、台湾、中国、アメリカと現状はわずか4つの国と地域のみです。海外への出店の観点からは、IKEAにもまだまだ拡大の余地はありますが、ニトリはまだ本格化しておらず、それゆえ伸びしろが大きいともいえるでしょう。

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【戦略】

ニトリは471店で売上高5,219億円ですが、IKEAはわずか340店で売上高4兆2,205億円に達しています。ここで1店舗当たりの売上高を計算すれば、ニトリの11億円に対してIKEAは124億円と11倍を超える開きがあります。これは出店戦略の違いに起因するものといえるでしょう。ニトリがドミナント戦略で15万人から20万人程度の比較的小さい商圏で店舗が近接するように出店しているのに対して、IKEAは大型店戦略で100万人から150万人の大きな商圏に大規模店を出店し、1店舗当たりの売上高が最大になるような出店戦略を採用しています。このように出店戦略面では大きな違いがあるのです。

【商品】

商品自体も、ニトリとIKEAではその特徴に大きな違いがあります。共にSPAモデルで商品企画からデザイン、製造、販売を自社のみで展開するビジネスモデルを導入していますが、機能性を重視したベーシックなデザインを主流とするニトリに対して、IKEAは北欧のファッショナブルなデザインを取り入れた商品が中心となります。アパレル業界で例えていうならば、ベーシックなデザインのユニクロとファッショナブルなデザインのH&Mというポジショニングとほぼ同じといえるでしょう。

デザインもニトリは基本的に社内のデザイナーを活用する一方で、IKEAでは社内外のフリーランスのデザイナーがデザインしたものを、デザインの素晴らしさはもちろんのこと、かかるコストやIKEAの環境基準への適合など、様々な面からチェックして最終的に決まった案にデザイン料を支払うというシステムになっているのです。

このようにグローバルマーケットでは、ニトリのかなり先を行くIKEAですが、特徴を比較してみると、必ずしも正面からぶつかり合う関係ではなく、ニトリにもグローバルマーケットでのチャンスは大いにあるといっても過言ではないでしょう。今後、IKEAがヨーロッパを中心に事業拡大を図る中、ニトリは日本企業の強みを活かして中国や東南アジアを中心にドミナント戦略で集中的にマーケットを開拓していくことができるのではないでしょうか。

グローバル戦略では、業界は違えど機能を重視したシンプルなデザインという商品特性が似通ったユニクロを展開するファーストリテイリングの海外進出のケースをベンチマークすることもできるかもしれません。

ただ、これまで順調にビジョンを達成してきた似鳥昭雄氏率いるニトリといえども、今後のハードルは益々高くなることは間違いないでしょう。

果たして、思い描いたビジョン通りにニトリを店舗数3,000店、売上高3兆円の巨大なグローバル企業に導くことができるのか?

ニトリの飽くなき成長への挑戦はこれからもまだまだ続きます。

 

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