かつて日本に捨てられた日本人。いま朝鮮半島有事ならどうなるか

 

先日、トランプ大統領は「金正恩委員長と会談する意思ある」と明言しましたが、北朝鮮は依然としてアメリカへの不信感を強く持っており、両者が歩み寄るのは難しいとも言われています。万が一、北朝鮮が暴発してソウルが火の海になるようなことになったら、日本の現在の法律で在留邦人を救出することは可能なのでしょうか。今回の無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』では、かつて異国の地で絶望を味わった体験者の話を引きながら、日本人が知っておくべき「苦い過去」を紹介しています。

半島有事に邦人救出はできるのか?

北朝鮮が暴発してソウルを火の海にする危険性が高まっている。韓国には3万人近い在留邦人がいるが、いざとなった時、日本政府は彼らを救出できるのだろうか?

在韓米軍はこの1月に米軍人の家族・数十名を沖縄に脱出させる訓練を実施したが、これら家族はその後も沖縄に留まっており、訓練を装った避難ではなかったか、という推測がなされている。また6月には韓国在住の米国民間人を海外に避難させる訓練を実施することが明らかになっている。

我が国の国会は森友学園や大臣失言などの「重大問題」への民進党の追求に振り回され、国民の生命と安全の問題には割く時間がないようだ。こんな状態で、一朝有事の際には米国が軍人家族や民間人を護るように、日本政府は韓国在住の我が同胞たちを救出できるのだろうか。

この問題については、門田隆将氏が『日本、遥かなり エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』の中で、昭和60(1985)年のイラク・イラン戦争におけるテヘランの邦人救出、および、平成6(1994)年のイエメン内戦からの邦人脱出について、多くの関係者へのインタビューに基づいて事実を明らかにしている。

テヘランでの邦人救出とは、イラク空軍の空襲下トルコ政府がエルトゥールル号遭難事件でのお返しとばかり、トルコ航空の飛行機を出して邦人を救出した事件である。歴史に残る美談であり、この義挙を行ったトルコ政府とトルコ国民に対して日本国民としては深甚の感謝を捧げるのみである。

しかし、この美談は、日本政府が邦人救出の飛行機を出さなかったからこそ起こりえたのである。他の多くの国々のように日本も救援機を出していれば、我が同胞たちは粛々と帰国でき、トルコ政府も他国民のために危険を冒す必要もなかった。世界が称賛するトルコ政府の義挙の裏には、世界が唖然とする日本政府の不作為があったのである。

その日本政府の不作為の犠牲となりかかった我が同胞たちが、どんな思いをしたのか、その生の声を、門田氏は丹念なインタビューで拾い上げている。「日本、遙かなり」という一見、ロマンチックな表題は、実は戦争や内戦の中で助けに来てくれない祖国の遠さに絶望した在留邦人たちの叫びなのである。

朝鮮半島有事で、日本政府が救出に動かなければ、ここでも「日本、遙かなり」という絶望の叫びが発せられる恐れがある。すぐ目と鼻の先の隣国なのに。

print
いま読まれてます

  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け