バブル崩壊も気づかず。日本人が持つべき歴史の転換点を見抜く眼

 

バブル崩壊からの不安な世相

日本にとってバブル崩壊は大きな転換点で、60~90年までは二ケタ成長が当たり前だった。そして、その当時は将来への不安を感ずる人は皆無だった。私は「何とかなる、デスクより現場の空気を吸っていた方が面白い」と思い、87年に毎日新聞を辞めフリーになった。退職した時は本当に景気がよく、先行きに不安はなかった。今だったら本当に辞められたかどうか…。

昨今、多くの人が、不安を抱えている。そういう意味からも人の人生も左右する感じがある。どこで自分が決断するか…企業も皆バブル崩壊を後で気づくわけだが、当時は2~3年でまた昔の活況だった時代に戻るとタカをくくっていた。

89年秋、ヨーロッパの首相級の一人と食事をする機会があった。この方はゴルバチョフ書記長とも会談した経験を持つ人物だ。その際、「世界が不況に陥っている」と思わせる印象的な言葉を聞いた。私が「ゴルバチョフのソ連はどこへ引っ張ってこうとしているのか」と聞くと、その方は「スウェーデン型の社会民主主義的な福祉国家だ。ただ、今のソ連国民が欲しているのは思想より肉、野菜、砂糖、塩、ウォッカ、石鹸、衣料だ。結論からいうとゴルバチョフが成功する可能性は五分五分以下かもしれない。ソ連東欧の中で当面の緊急課題は支援だ。この冬が越せるかどうか飢餓の瀬戸際にあるからだ」と言っていた。その後、実際にアメリカとソ連の首脳会談が行なわれ、西側がゴルバチョフを支援した。そしてソ連は西側経済圏の中に入っていった。

再編の嵐に巻き込まれる日本経済

2000年代に入ると市場経済とグローバル化IT化が加速していった。さらにそれまで銀行、鉄鋼、自動車、家電などが隆盛だった日本も、2000年以降は殆どの業界が再編の嵐に巻き込まれる。中でも、14~15行あった都市銀行が2000年ごろから「みずほ」「三井住友」「三菱東京UFJ」のメガバンク3行に集約。鉄鋼も「日本鋼管」と「川崎製鉄」の「JFEグループ」「新日鉄と住友金属の統合」といった信じられない経営統合が続いた。

家電では一世を風靡したシャープが台湾資本の鴻海(ホンハイ)、三洋がパナソニック傘下ソニーでも2008年に2000億円を超える赤字を計上し「リストラ部屋」に数千人が送り込まれた。ソニーの栄光を知っている人には信じられない光景だった。

ありとあらゆる産業が再編に巻き込まれたわけだが、歴史の転換点に気が付かなかったり、見誤ったりするとそのあとのツケが大きい。日本は農耕民族で、昨日は今日の続き、明日は今日の続きと平穏に続くと思っている。そのため、突然変わることに気が付かない。「3.11」以降は、日常が普通ではなくなってきたということにようやく気が付いたという状態。というのが非常に大きい。

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