じゃあ、異様に等身が高かったり低かったりする少年漫画や、棒きれのような手足に、顔の大半を被う巨大な目を持つ少女漫画に対して「美意識」を感じてしまうのは、いったい全体どうしてなんでしょう?
実際に、あんな巨大な目をして棒きれのような手足の人間がいたら普通にホラーです。しかし、アニメ的表現だと目は多少大きいのは当たり前、むしろ現実サイズのほうが違和感さえ感じます。アゴだって尖りすぎです(笑)。
これは、人間が人間を美しいと認識する反応「正常刺激」を越えて正常に見える「超正常刺激」であると考えられています。
ようするに、人間の美意識は、顔は左右対称であるほど美しく、目は健康的にキラキラして大きい方が魅力的で、アゴはしゅっと締まっているほうがカッコイイという人間の美意識を極端にしたもの……それがアニメ的表現です。
故にアニメにくらべると実写が見劣りさえしてしまうのは、人間の脳が「~~であればあるほど良い」という錯覚に陥っているからと言えます。
孔雀は尾羽が派手なほうがモテるという鳥なのはご存じの通り。では、孔雀の尾羽にネオンライトサインを付けてパチンコ屋の看板みたいにしたら……あきらかにおかしくても、その改造孔雀はモテモテになることが実験でも知られています。
つまり、デコ孔雀は孔雀の中ではアニメ的格好良さになっているわけです。人間でいうところのカートゥーンアニメに出てくる砂時計のようなくびれたボインなおねーさん……といったところです。
コレは別に悪いことではないのですが、たまに現実と仮想の区別が付かずに、棒きれのような手足を目指して拒食症になる子なんかがいるわけです。また、二次元に近づこうと謎の改造手術を受け続け、不気味の谷にどっぷりはまった女性なんかは、たまにネットニュースに上がってきますが、アニメが悪いわけではなく、彼らの脳がおかしな方向にシフトしちゃってるからと言えます。まぁ本人が幸せであれば何も問題ないわけですが。
と、いうわけで、美意識も追い求めすぎると不気味の谷に真っ逆さまと、実にアンバランスな危ういものでもあるということ。
テンプレ美形を目指すのではなく、メイクや美容整形も自分の個性を最大限生かす方向で調整した方が「魅力的」だと思うのです。
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『アリエナイ科学メルマ』
著者/くられ
シリーズ15万部以上の不謹慎理系書「アリエナイ理科ノ教科書」著者。別名義で「本当にコワい? 食べものの正体」「薬局で買うべき薬、買ってはいけない薬 」などを上梓。学術誌から成人誌面という極めて広い媒体で連載多数。
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