日立の凋落、シャープの復活。国内テレビ販売で明暗を分けたもの

 

国内外で健闘するソニー、存在感高まるシャープ

とはいえ、国内では市場が縮小し、海外では韓国勢などに追いやられているため、日本のテレビメーカーの多くが苦しい立場に立たされています。そうした中でも、近年はソニーが国内外で健闘しています。先述したとおり、海外シェアはサムスンとLGに次ぐ3位(シェア8.5%)となっていて、日本勢ではトップを走っています。国内ではシャープ、パナソニック、東芝に次ぐ4位(同12.8%)と健闘しています。なおソニーのテレビ事業の地域別売上高は欧州が最大で米国と合わせると半数近くを占めます。

ソニーのテレビは世界で一定の存在感を示すことに成功していますが、もっとも、最初から好調だったわけではありません。ブラウン管テレビから薄型液晶テレビへ移行する00年代に薄型テレビでは出遅れてしまい、韓国勢との価格競争や過剰設備投資が負担となり採算が悪化、テレビ事業は14年3月期まで10年連続で赤字に陥るなど苦戦を強いられていました。

転機となったのは11年です。反転攻勢に打って出るため、それまでの数量を追う経営を改め、モデル数を絞り込み、画質やデザイン、使い勝手といった基本性能を追求した高付加価値のテレビを生産・販売する戦略に舵をきったのです。高付加価値商品では13年に本格投入を始めた4K対応液晶テレビが特に業績に貢献しました。こうした戦略が功を奏し、事業の業績が上向くようになったのです。15年3月期にはテレビ事業で11年ぶりとなる黒字化を達成しています。

ソニーの高付加価値商品で話題となったのが、17年5月に投入した有機ELテレビです。従来のテレビのように画面周辺にスピーカーが備えられているのではなく、パネル背面にある駆動装置が画面自体を振動させて音を出す仕様となっています。まるで映像から音が出ているかのような没入感の高い視聴体験ができ、「画面から音が出るテレビとして話題を集めました。

こうした高付加価値商品の投入が奏功し、ソニーはテレビ事業で存在感を示すことに成功しました。18年3月期のテレビ事業の売上高は前年から2割増え8,648億円となっています。また、液晶テレビのメーカー別シェア(金額ベース、同社調べ)は3位だったといいます。今後の躍進が期待されるところです。

シャープのテレビも存在感が高まっています。シャープは01年に液晶テレビ「AQUOS(アクオス)」を発売しました。普及の目安とされた「1インチ1万円以下」に単価を引き下げて競争力を高めたほか、03年に地上デジタルテレビ放送が始まりテレビの買い替え需要が高まったことでアクオスの販売は好調に推移します。

生産体制の整備も進めていきました。04年に大型液晶テレビまで一貫生産できる亀山第1工場を、06年には第2工場を稼働させています。シャープの亀山工場は「世界の亀山」ブランドの液晶テレビを生産することで広く知られるようになり、それに伴いアクオスの販売は伸びていきます。

しかし、00年代中頃からサムスンやLGなど海外勢が台頭し価格競争に巻き込まれたことでアクオスの販売は次第に鈍るようになります。そこでシャープは価格競争力を高めるため、09年に、それまでの液晶パネルを自家消費する生産方式を改め、液晶パネルを他のメーカーに外販する戦略に舵をきったのです。

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