隣家に手紙を投げ込めるか…安田純平が拘束時に綴った緊迫の真実

 

先に出した企画書で「10日まで」としたので、その可能性を待つべきか。それまでに取引の感触がなければ乗ってくるかもしれない。それまでは10日まで帰した方がいいということを訴え続けるほうがいいかもしれない

※ 帰国する飛行機に乗るためには10日にはトルコに向かわなければならない、と彼らに伝えていた。

雑誌の発売が6日なのでゲラチェックがもうぎりぎりだ。シリアに行く計画であることは話してあったので、当然、行方不明を知るし、日本政府にも認知しているか聞くから、日本政府も知るとなれば、欧米、トルコ、カタール、サウジ、クウェートなどにも伝わり、彼らの支援組織にも伝わる

どこかの組織と取引があれば何かの変化に人々は気づくので、どの組織がやったのかも知られるだろう入ってきた国境も閉まるに違いない

オレを使うよい方法は、一緒に写真撮って帰すこと、受け入れ、安全確保し、もてなして帰し、後藤を殺したISと違うとアピールすること。でなければIS的な組織としてみなされることになる

※ 相手を説得するための材料を考えている。かなり無理矢理よいように解釈して、こうすれば通じるはず、と考えようとしている。

講演を飛ばせば多くの人々が知ることになるのでコントロールできない。公になってからの解放では俺が何を言ってもテロリストにしかならない

10日まで取引の可能性を探るのはよいが、10日までには帰した方が絶対によい。サポートしている国にはどこと取引したか絶対に伝わるし、それは欧米に伝わって「テロ集団」としてリストアップされる。ISと同じ。

やれることをやるしかないので、また企画書を書く

一緒に写真を撮って出せ、までは同じだが、10日までにトルコに帰さないと日本政府に通報され、トルコ国境は閉まり、全ての国が調査を始める。

俺が入った日、道、どの組織が車に乗せたかは簡単に分かる。そうなると「テロリスト組織」としてリストアップされることになる。だからその前に帰してくれた方がお互いのためにいいでしょう、という脅しの内容

実際、こうなることは間違いない。取引しようとしてもいいが、限度は10日。それ以降は失うものが大きい。分かっているのか知らないが、分からせる必要がある。通訳が本当に伝えてくれればなのだが。

通訳が午後に来たので企画書を渡す。かなり深刻に受け止めている感触があった。ちゃんと訳して渡してくれるという。前の2つもその場で読ませたといい、信用できそうだ。

※ そこまですぐに調査されるものと思っていたが、日本ならばありえても、現地に入ることのできないシリアでは難しく、裏の取れる情報を集めるのは困難だ。彼ら自身もそれが分かっているので、彼らが何者なのかを私自身に知られなければ、正体がバレるとは考えていないようだ。

 

戦闘員ではない通訳は真面目に話を聞いていたが、「正体がバレるかも」という言い方をしたのは、相手を刺激することになり、失敗だった。相手を刺激しないこと、嘘をつくとバレたときに深刻なので嘘を言わないこと、などは拘束された場合の鉄則だが、何かしないではいられない、という心理状態になっていた。

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