隣家に手紙を投げ込めるか…安田純平が拘束時に綴った緊迫の真実

 

ボスはオレの状態を聞いたらしく、その日のうちにこの豪邸に移ってきた。どんな様子か、怒ってないか、病気になっていないか、などと聞いたらしい。「もちろんショックを受けて落ち込んでいるという話をした」という。

今日は風もなく暑いのでパンツ一丁で過ごしているが、大きな扇風機と、BBCとか見られるテレビも用意するという。

「はっきり言ってこれって浪費でしょう。3人も4人も見張りに使い、毎日通訳をよこして、家を直して。オレにとっても浪費だ。やめたほうがいい」というのには同意していた。

どうもボスもオレがどうなってもいいと思っているわけではなさそうだ。ならせめてリミットにした10日までに帰してほしい。

どうせならもっと早くすればよかったが、スパイ容疑の時に正直に言ってしまったので、今さら変えるのはリスキーだ。覚えてない可能性が高いが。

※ トルコに戻らなければならない日程のこと。

通訳にオセロの話をする。彼は知らなかったが、要するにずっと黒でも最後に白を置けば全部白になるという話だ。シリアに入れた瞬間は白だったがずっと黒だった。

通訳に悪夢の話をした。

平穏な時は悪夢を見ると目覚め、夢だったことに安堵するが、今は幸せな夢を見ると目覚め現実が悪夢であることに気づいてショックを受けること。

これはシリア人が毎日感じているだろうことで、ほんの少しでも理解できた気がしている。シリアの現実を目で見ることはできていないが。

それも今はより快適な環境にしてもらっている。しかしリミットは迫っている。日本政府はオレのためではなくアメリカのためにどこまでも調査する。オレがその後解放されてもそれは止まらない

革命のため自由のために戦っている人がテロリスト扱いされてしまう。オレがずっと否定していたことで、どうしてもこれは避けたい。だから日本政府に知られる前に、よい思い出とともにトルコに帰してほしい。次の企画書はこういう話で5日ころに出すべし。

夕飯は具なしの炊き込みご飯に、ヨーグルト。サラダなし。

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