置き配の全国展開に見えるアマゾンの姿勢
特に注目したいのは、日本では浸透していない置き配をやろうと考えたことです。全国展開をする上では、盗難や破損といった問題も出てくることが予想されます。
これらの見えない声が大きかったため、宅配業界では置き配に消極的だったと言えます。なので、お客さんのニーズに答えようとする姿勢がないと、なかなか最初の一歩が踏み出せません。それをアマゾンは業界で初めてやろうと決めたのです。
私がいた時からそうでしたが、アマゾンは、顧客中心主義を掲げています。この本質は、「新しい取り組みをやるかどうか迷った時は、お客さんが喜ぶかどうかで決める」という考え方に基づきます。
今回も、顧客ニーズの解決と、想定される困難なことのジレンマに悩んだでしょうが、自社の売上拡大になり、さらに、お客さんのためになるのであれば、乗り越えよう、と決断したのでしょう。規模が大きくなっても、アマゾンはこの辺のことを忘れていなさそうで、ホッとしました(笑)。
アマゾンでは、顧客中心主義が染み込んでいたので、社員はいつも、「お客さんがちょっとでも便利に買えるようにするには、どうすればいいのか?」を考えるクセがついていました。なので、お客さんの「潜在的なニーズを発見する」能力には長けていました。
すでにわかっている顕在的なニーズは、ライバルもわかっているので、すぐに解決できます。しかし、潜在的なニーズはリサーチなどでは出てきません。顧客を観察することで、自ら発見するものです。このお客様を見つめるという姿勢がいつもあるので、「お客さんが困っているのは何か?」にすぐに気づき、次の一手が打てるのです。
この考え方は、どのような仕事にでも当てはまりますよね。営業であれば、取引先が悩んでいるお困りごとをどう見つけるのか、観察し続けること、または、聞き出すことで引き出すことになりますし、飲食店であれば、お客さんのちょっとした一言で、発見できることがあります。
顧客中心主義、ぜひやってみてください。
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