首都直下と南海トラフ巨大地震が切迫。日本の備えには何が足りないか?

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新型コロナウイルスに対しては、後手後手の対応となり、危機管理の甘さや弱さを露呈した日本の統治機構。大災害や大規模テロが首都東京で発生した場合への備えはできているのでしょうか。危機管理の専門家で、メルマガ『NEWSを疑え!』を主宰する軍事アナリストの小川和久さんは、自身も検討会のメンバーに名を連ねた危機管理都市の構想を解説。議論されるも未着手のままの現状を憂い、切迫する首都直下地震や南海トラフ巨大地震への危機感の欠如に警鐘を鳴らしています。

日本が直面している危機はコロナだけじゃない

東日本大震災から10年。その教訓を風化させないとのかけ声のもと、様々な報道が行われていますが、不思議でならないことがあります。復興庁の2031年までの存続が決まり、国土強靱化のかけ声こそありますが、例えば国家存続にとって不可欠な首都機能の維持についても何ら着手されていないのが実状です。

東日本大震災直後の2011年夏、国土交通省は東京で大規模災害やテロが起きた場合の首都機能のバックアップについて検討を始める方針を固め、同年11月末に「東京圏の中枢機能のバックアップに関する検討会」を設置し、私も委員として加わりました。委員は次の9人でした。

青山 佾 明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科 教授
荒井良雄 東京大学大学院総合文化研究科 教授
池田彰孝 東京商工会議所 副会頭、SMK株式会社 常勤監査役
岩見隆夫 政治ジャーナリスト
大西 隆 東京大学大学院工学系研究科 教授(座長)
小川和久 軍事アナリスト、特定非営利活動法人国際変動研究所 理事長
河田惠昭 関西大学社会安全学部 学部長・大学院社会安全研究科 研究科長・教授
指田朝久 東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 主席研究員
森川博之 東京大学先端科学技術研究センター 教授

私が名を連ねているのは、2004年に石井一衆議院議員のかけ声のもとに超党派の『危機管理都市推進議員連盟』が結成され、危機管理を担当していたからです。

簡単に説明しますと、危機管理都市は次のような構想です。適切と思われる地域に『もう一つの首都』(副首都)を建設して、東京のバックアップ機能を担わせます。これに、立法(国会)と行政(政府)を中心とする国家存続に不可欠な機能を設置し、常に東京と一緒に国家機能を維持するための営みを行わせ、いつ何時でも交互にバックアップの役割を果たし得るように備えるわけです。

東京から300キロ以上離れた自然災害に強い場所に、昼間人口20万人、夜間人口5万人ほどの、経済活動や研究開発で世界の先端を走るような国際都市を建設します。

また、『危機管理上の衛星都市群』(サテライト)を展開し、バックアップ機能を分散しておきます。この衛星都市群は、基本的には地方の中核的都市を活用し、東京と『もう一つの首都』に対して中央省庁の数に対応して配置していくというイメージです。30都市前後が対象で、配置されるバックアップ機能の性格や特質を踏まえた特色ある都市整備をおこない、危機管理にとどまらない地域活性化のための中核都市の整備をも実現していきます。

危機管理都市推進議員連盟は、大阪の伊丹空港の機能を関西国際空港と神戸空港に集約し、伊丹空港の跡地に危機管理都市を建設しようという方向が有力でした。東日本大震災の後、私はこの危機管理都市を福島県内にも建設し、復興の柱にするよう提案しましたが、関心はいまひとつです。

二階俊博自民党幹事長は、国土強靱化を言うのであれば、首都機能の維持によって日本の国家存続を可能にするような構想を実現して欲しい。首都直下地震や南海トラフ地震が切迫していると言っているにしては、危機感に乏しい日本だと思いませんか。(小川和久)

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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