イラン“対米強硬派”大統領誕生で「イスラエルの先制核攻撃」が懸念される理由

shutterstock_1988893976
 

先日おこなわれたイラン大統領選挙で、「対米強硬派」のイブラヒム・ライシ氏が当選しました。最近ではイスラエルとパレスチナの緊張が高まっている中東ですが、このイラン新大統領誕生は国際情勢にどのような影響を与えるのでしょうか? 今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、アメリカの盟友であるイスラエルとイランの問題だけでなく、周辺の中東諸国でも「核武装ドミノ」が起きる危険性を指摘。そのような状況が起きた場合、EUや弱体化が進むアメリカにも影響が及ぶと予測し、日本の「仲介」に期待が高まると予測しています。

【関連】日本は欧米に騙されるな。バイデンの二枚舌「人権外交」が招く終末戦争
【関連】ここにも中国の影。イスラエルとパレスチナ衝突でほくそ笑む指導者たちの思惑

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

大統領選で「対米強硬派」当選のイランが国際情勢に与える影響

ロウハニ大統領の任期が8月に満了することを受けて6月18日に行われた大統領選挙で、対米強硬派でイスラム法学者、そして法議会議長(検事総長に相当)のイブラヒム・ライシ氏が当選しました。

穏健派の首領と見られていた外務大臣のザリフ氏が出馬できず、ほかの穏健派の出馬資格が認められなかったことで、出来レースともいわれた今回の大統領選挙。案の定、大統領選挙としては過去最低の49%という投票率になりました。

予想通り、法学者で法議会議長でもあるイブラヒム・ライシ氏が勝利しましたが、低い投票率にもかかわらず国際社会が彼に注目するのは、強硬派のイラン大統領が選出され、内政・外交面で大きな変化が起きる可能性があるからだけではなく、9月に大統領に正式に就任したのち、そう遠くないうちに、ハメネイ氏の後継の最高指導者になると目されているからでしょう。

そのライシ氏ですが、対米強硬派という看板を強調しつつ、ロウハニ現大統領の下で結ばれた核合意に対しては、否定的な立場を取っていません。

イラン政府内の友人たちに尋ねても、ライシ氏が核合意の締結について非難したことはないということです。

しかし、核合意の遵守は『まずアメリカ政府が対イラン制裁をすべて解除することが前提』とするという“絶対条件”を押し出し、イラン批判を繰り返すアメリカおよび欧州各国に対して一歩も退かない姿勢を打ち出しています。

最高指導者であるハメネイ師や、その前任であったホメイニ師のように『アメリカに死を』をスローガンに反米を強調するのではなく、あくまでも対話のドアは閉じないという姿勢は希望を抱かせる雰囲気を醸し出しますが、先行きは不透明です。

そんなライシ氏をアメリカ政府も警戒し、アメリカの制裁対象に含めていますが、バイデン政権はライシ氏が新大統領に選出されたことを受け、新政権との対話の機会を模索し始めました。

バイデン大統領就任後、イラン核合意への復帰の可能性に言及していますが、バイデン政権が課した条件は【イランが核合意で定められた諸条件を遵守すること】であり、それが確認できるまでは、制裁の解除はないとしています。

つまり、現時点では完全に議論は平行線で、アメリカとイランの間の関係改善は望めそうにありません。

しかし、アメリカ国内にある反イランの流れは変わらないものの、バイデン政権においては、トランプ政権時代と異なり、真っ向からの対立路線を選べなくなってきています。

国際情勢の裏側、即使えるプロの交渉術、Q&Aなど記事で紹介した以外の内容もたっぷりの島田久仁彦さんメルマガの無料お試し読みはコチラ

 

print
いま読まれてます

  • イラン“対米強硬派”大統領誕生で「イスラエルの先制核攻撃」が懸念される理由
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け