イラン“対米強硬派”大統領誕生で「イスラエルの先制核攻撃」が懸念される理由

 

バイデン政権がイランとの対立路線を選べない3つの理由

その理由は【イスラエルとパレスチナの争いの再燃の陰にいるイラン】、【瀬戸際外交と一言では片づけられないほどにまで高まったイランの核兵器開発能力】、そして【(アメリカには直接的な影響はないとされているが)バイデン大統領がG7で約束した国際経済の回復への悪影響】の3つが考えられます。

一つ目の【イスラエルとパレスチナの争いの再燃の陰にいるイラン】ですが、微妙かつデリケートなバランスで保たれていた和平が、イスラエルおよびパレスチナの国内情勢ゆえに崩れたのは記憶に新しいかと思います。

エジプト(とアメリカ)の仲介により、イスラエルのネタニエフ前政権とハマスの間に停戦合意が結ばれましたが、その後も交戦状態は続いており、ちょうど最近、イスラエルの新政権もハマス(編集部註:イスラム主義を掲げるパレスチナの政党)の拠点への攻撃を加え、和平が崩れています。

ハマスは様子を見るために反撃を思いとどまったと言われていますが、その影にはイランからの介入があったようです。

ハマスがイスラエルへの攻撃を激化させた際、今回大統領に選出されたライシ氏は、公的にハマスの攻撃を賛美しましたし、イスラエルへの対抗のために、ハマスに直接的にも間接的にも支援をおこなったと言われています。

今回のイスラエル新政権からの、挨拶代わりの攻撃に対して、ハマスが反攻しなかったのは、以前の戦闘で受けた被害から立ち直っていないからとする説が出ていますが、実際には、イラン、特にライシ氏と革命防衛隊から反攻を思いとどまるように横やりが入ったからという情報も入ってきています。

その理由は、誕生したばかりで、かつ価値観が異なる多数の政党による連立という基盤の弱さが懸念されるイスラエル政権が、どのように意思決定をおこない、かつ軍事攻撃がmobilize(モビライズ)されるのかを試したかったからだそうです。

それは今後のハマスによるイスラエルとの対立での対応にも関わりますが、実際にはライシ政権誕生後のイランが、イスラエルとの武力衝突不可避となった場合のイスラエル側の即応能力を見極めようとしていると思われます。

イスラエルとの微妙な距離感があるとされるアメリカのバイデン政権ですが、イランおよびハマスのそのような反イスラエルの企てを黙認はできず、対イラン制裁の解除を含むアメリカとの対話というカードをちらつかせることで、イランに決定的な決断をさせたくないとの思惑が見え隠れしています。

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