イラン“対米強硬派”誕生が、国際経済の回復基調に浴びせる「冷や水」
三つめは、おそらくアメリカにとってはもう直接的な影響はないかもしれませんが、【イランで強硬政権が出来ることで、ホルムズ海峡の緊張が高まると予想され、原油価格が1バレル当たり100ドルを超える予想】が出ていることによる世界経済の停滞です。
言い換えると、アフターコロナの国際経済の回復基調に一気に冷や水を浴びせる悲劇を招きかねない状況です。
このメルマガを執筆している現在の価格は1バレルあたり74ドルほどですが、イランの強行は政権の誕生によりアメリカや欧州との緊張が高まり、経済制裁と原油の輸出制限が強化される恐れから、先物価格の予想(コールオプション)は100ドルくらいが有力になってきています。
コロナ渦がある程度落ち着いてきたとされる状況分析から、中国のみならず、多くの国の経済活動が再点火して活発化してきていることで、原油への需要が今後、一気に増えるとされています。
巷では脱炭素経済がブームになっていますが、その実現は中長期的な視点になっている内容であり、目下の短期的な経済成長や活動においてはまだ主流とはなり得ません。つまりまだ原油および石油製品が主な動力源となります。
そのような中、一大産油国であるイラン製の原油の輸出が制限されることは、世界で再び高まるニーズにこたえることが出来ず、それが、バイデン大統領、そしてG7首脳が強調するBBB (Build Back Better)というコロナ禍からの復活に水を差すことになりかねません。
アメリカ合衆国は、シェールオイルとシェールガスの埋蔵量と掘削能力のおかげで、直接的な影響は受けないと言えますが、アメリカの経済的な復活を助ける同盟国経済は、まだまだ化石燃料の確保が至上命題であり、原油価格の著しい上昇と供給量の著しい現象は、同盟国経済の回復基調を遅らせ、それが間接的にアメリカ経済の回復に悪影響を及ぼすという、悪循環を呼びかねません。
ゆえに、これまで制裁対象に指定していたライシ氏がイランの新リーダーとなることで、緊張が高まり、原油価格の上昇を受けて、国際経済の回復基調に水を差さないように、アメリカ政府の主張と立場は守りつつ、何とか対イランの緊張関係が行き過ぎないように、非常に困難なかじ取りを考えなくてはなりません。
制裁によってイラン経済は落ち込み、イランの国民は苦しんでいることは確かですが、イランへの過剰な圧力は、翻って制裁を科している国々の経済に痛手を負わせ、その悪影響がアメリカ経済にも及ぶ危険性が、今までになく顕著になりつつあります。
このような状況下で、どのような秘策が考えられるでしょうか?
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