プーチン・リスクを思い知った習近平の本音。対米では“共闘一択”の苦しい立場

2022.04.14
 

舵取り困難な問題に直面する習近平氏

国際社会の中で影響力を高める中国としては、各国からの対中批判はなるべく避けたいことから、ウクライナ侵攻でロシア支持を表明することはできない。しかし、習近平は中国にとっての最大の競争相手を米国と位置付けており、そのためにはロシアとの良好な関係が重要であることを熟知している。それがウクライナ情勢における中国の曖昧な姿勢に繋がっていて、習近平は戦略的に、中国の国益を中長期的に考え行動に出ている。

ウクライナ侵攻でロシア軍の進軍が思うように行かず、プーチン政権の脆弱性も指摘されるなか、ロシアのラブロフ外相は3月30日に中国を訪問して王毅国務委員兼外相と会談し、両国が戦略的に協力していくことで一致した。米国など欧米諸国はロシアへ経済制裁を強化するなど非難を強めているが、中国は経済的にロシアと協力する姿勢を示している。王毅国務委員兼外相の対応からも、「やってしまったものは仕方がないが、対米でやはりロシアとは関係を重視する必要がある」という中国の本音を読み取ることができる。

現在のウクライナ情勢でプーチンは後に引きない状況になっており、おそらく限界まで強気の態度を貫くことだろう。この問題は長期化する可能性が濃厚で、その分中国がどのような姿勢を見せるかに日々国際社会の関心が注がれることになる。これは中華民族の偉大な復興を掲げる習近平としては舵取りが難しい問題である。上述のように、米国は別として、中国としてはできるだけ多くの国と良好な関係を維持、発展させたいのだが、ロシア寄りの姿勢を長期間に渡って維持すれば、常に多数の国から非難の対象になるというリスクが付きまとう。今後、習近平はロシアへウクライナ侵攻はなかったかのような態度で対応していくことになるが、多くの課題が中国を待ち構えている情勢といえる。

image by: plavi011 / Shutterstock.com

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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