では、なぜ岸田氏は安倍元首相の話に「聞く力」を発揮するのか。その理由を全国紙政治部記者が解説する。
「岸田政権は首相が率いる岸田派、麻生太郎党副総裁の麻生派、茂木敏充党幹事長の茂木派という『主流3派』が支えていますが、それだけでは自民党内で安定的に多数派を形成できません。80人規模のグループ結成間近との噂もある菅義偉前首相との関係は修復不可能になっている以上、どうしても安倍派をひきつけておく必要がある。高市早苗政調会長や、外交部会などには安倍氏に近い保守派も多く、首相が苦手とする外交・安保分野で党内から批判され続けていれば政権が弱体化すると判断し、リーダーに近づいているのでしょう。自民党は、岸田首相を支える塊、安倍元首相が差配する塊、そして菅前首相の塊の三国時代に突入しました」
3つの塊には、3つの組み合わせがあるはずだが、岸田首相と菅前首相は絶対に組むことはない。
つまり、中間に位置する安倍元首相のグループを岸田首相としては絶対に敵になってもらっては困ると言うこと。これが土下座外交にも近い媚びへつらいが進んでいる背景だ。
麻生副総裁は、岸田氏について「『大丈夫か、なんか頼りない顔じゃな』とみんな言っていたじゃない。やらしてみりゃ、そこそこやる」と評したが、その裏には長期政権を狙う首相の打算も透けて見える。
「トップとしてやりたいことがない首相」「無色透明でグランドデザインがない」とも揶揄される岸田首相。
政府が年末までに改定する国家安全保障戦略など外交・安全保障政策に関する3文書は、安倍政権よりも「安倍カラー」に染まっている。
image by: 岸田文雄 - Home | Facebook