出生率の低下は1970年代から始まっていますが、繰り返し指摘されてきたのが「女性の社会進出」との関連です。
- 働く女性が増えたことで、晩婚化・非婚化の進展
- 働く女性が増えたことで、子供を産まない、産みたくても産めない女性が増えた
その結果として「出生率が下がった」という議論です。
しかし、2000年、05年、10年のそれぞれの時点において35ー39歳になったときの出生率を、女性の生まれた年代別に分析をすると、70年代前半に生まれた女性の場合、「晩婚化」が出生率の低下につながっていないことがわかりました。
一方で、「未婚率」の増加が出生率を引き下げることとは、一貫して認められています。
さらに、「女性の社会進出」は出生率を引き下げる要因にもなっていません。逆に、女性の就業率が出生率を高めるとする結果が、国内外で相次いでいるのです。
例えば、OECD加盟国のデータを利用して国別に分析したところ、80年代前半までは女性の就業率と出生率は負の関係が認められていましたが、90年代以降は正の関係に転じていることがわかっています。
つまり、「出生率あげたきゃ、専業主婦を増やせ!」という言説は時代錯誤であり、極めて乱暴な役割差別でもあります。働く女性が増え「育児と仕事」が両立できる環境が進んだのです。
そして、多くの論文で一貫して確認されているのが、子育て費用の高さが出生率を引き下げる要因になっている点です。
日本の社会保障のうち、子育て支援などに使われる額のGDPに対する割合は、世界最低レベルです。
東京大学大学院の山口慎太郎教授の分析では、OECD加盟国でもっとも多いのフランス。英国、スウェーデンと続き、日本はこれらの国々の半分以下とされています。
一番少ないのは米国ですが、全人口のうち65歳以上が占める割合は14.5%、24歳以下は33%と、人口構成が日本とは大きく異なっています。
他にも出生率に関連する要因は多種多様あるのですが、長くなりますのでまたの機会に取り上げます。
いずれにせよ、「日本が消えない」ためには、結婚したくてもできない状況に真剣に取り組む、子育て支援にもっと金を使う、早急に婚外子の議論を進めてほしいです。
日本に消えてほしくないですから。未来の大人のために。
みなさまのご意見も、ぜひお聞かせください。
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