昼前になると、たこ焼きを買いに来るお客さまが増えます。昼ご飯として食べるためです。
1人分を買う人もいれば、10人分を買う人もいます。10人分でも1,000円なので、買いやすいのです。
3時頃になると、幼稚園帰りの子どもとお母さんたちが、まとまってやって来ます。
子どもたちがベンチに並んで座り、みんなでかき氷を食べます。
非常に微笑ましい光景。下町ならではです。
しばらくすると、学校から帰って来た小学生たちが集まって来ます。
たこ焼きやかき氷を食べながら、ワイワイガヤガヤ。まるで、駄菓子屋さんの光景です。
これも、彼らの日常です。
さらに時間が進むと、中学生以上の子どもたちがやって来て、静かにおやつを楽しんで帰っていきます。
夕暮れには、定時制高校に通う生徒が、腹ごしらえのために、たこ焼きを食べたりします。
その中には、80歳を超えた生徒もいます。通学の日には必ず立ち寄ると言います。
小さな子どもから高齢の方まで、さまざまな年代の人たちが、このお店を愛し、なくてはならない存在だと感じています。
というより、あって当たり前だと思っているのかもしれません。その場所に、60年間変わらぬ姿であるのですから。
誰もが意識せずに利用しているのです。
1,500円、2,000円というかき氷を売り、行列ができているお店も立派な商売ですが、100円のかき氷で子どもたちを笑顔にするのも、素晴らしい商売です。
ただ、どちらが人びとの記憶に残る商売なのかと考えると、後者であることは疑いようがありません。
行列のお店は、次の年には姿を消しているかもしれませんが、地域に根づいているこのお店は、これから10年20年続いていくはずです。
現実的には、店主の高齢化で閉店の可能性もありますが、元気でいる限りは、続けてくれることでしょう。誰もがそう信じています。
やがて、小さな子どもは大人になり、その子どもを連れて、またやって来てくれます。
いまある姿のままで、新しい子どもたちを優しく受け入れてくれるはずです。
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