中国「独身の日」セールで売上横ばいも大きく変わった中身とは?

 

この原因が、少なくとも短期的にはコロナ対策にあるのは間違いない。感染が止まらないことで広がるどんよりした空気。だが、ここにきて中国全土を覆う空気に一条の光が差す出来事が起き、人々が大いに留飲を下げたという。大物が感染対策にものを申したのだ。

かつて南昌蜂起にも参加した共産党初期の大幹部・陶鋳の娘(陶斯亮)だ。彼女は現在の厳しすぎる感染対策を批判する長文の書き込みをネットで発表したのだ。ネットはたちまち大騒ぎとなった。

「陶鋳の娘といえば、いわゆる幹部子弟を意味する「紅二代」の代表的存在。当然、一般人が正論を吐くよりは、ずっと中央には届くでしょう。人々の期待が高まったのも無理からぬところです。そして、それと同じタイミングで党中央からは『厳しすぎる感染対策を見直す』ような発信が続いたのです。だから、『陶斯亮がやってくれた』、『紅二代の力だ』といった反応につながっていったのです。陶斯亮の発信はメディアでもたくさん取り上げられました」(前出・北京のコンサルタント)

余談だが、こういう現象を見れば、日ごろよく言われる「習近平は太子党」という説がいかにいい加減なものかがよくわかる。幹部子弟がみなつながって一つの勢力を形成しているのであれば、紅二代の陶斯亮がわざわざネットで不満を書き綴るまでもなく話は伝わった──習近平に直接電話はできないまでも必ずルートは見つかる──はずだからだ。

さて、その話は一旦横に置くとして感染対策の話にもどして言えば、実際のところ感染対策の緩和──これを緩和と呼んでよいのか否かは迷うところだが──は、陶斯亮の手柄とは言い難い。このメルマガでも何度も触れてきたように、厳しすぎる感染対策は、決して党中央の望んだことではなかったからだ。事実、今年6月の段階で、国務院はわざわざ「行き過ぎた感染対策をするな」と呼びかけている。「なんでもかんでも封鎖すればよいというものではない」という批判は、地方に向けて何度も発せられてきた。

だが、こんな呼びかけをしても地方の暴走が簡単には止まるはずはない。政治的な動機があるからだ。地方をあずかる各地の書記たち(各地の責任者)にしてみれば、やはり感染者を出さないことが第一だ。万が一感染者を出してしまった場合には速やかに「ゼロ」に戻すという以上に手堅い、「上」に向けた最高のアピールポイントは見つからなかったからだ。だが、20大を機にここに大きなメスが入った──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2022年11月13日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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