国益をかなぐり捨ててまで「アメリカ第一主義」を貫く岸田外交の不思議

 

安倍時代にも中国包囲網形成の動きは活発だった。しかし、その一方で二階俊博幹事長に親書を持たせて訪中させたり、日中韓の枠組みに取り組むなど、多面的であった。日本とアジアの利益に立脚した動きもあった。危機の高まりをきちんと管理しようとする意志も示していた。

これはトランプ外交にもあてはまることだが、ドナルド・トランプ大統領の言動は過激でも、危機を激化させることについて極めて慎重であった。ジョー・バイデン大統領は平和や安定を頻繁に口にしながらも、実際の行動はむしろ対立を煽ることに熱心で、危機管理は後回しにされている。

ロシアのウクライナ侵攻後に、「トランプが大統領であったらロシアのウクライナ侵攻が起きなかった」との見立てが巷にあふれたが、一考に値する見解だ。2020年の大統領選挙では、「中国がバイデン大統領の誕生を熱望している」との観測があった。しかし、その見立てには何の根拠もなかったようである。

事実、岸田・バイデンは日中や米中関係に限らず世界の不安定化を加速している。中国が安倍、トランプ時代を懐かしむのも無理のないところだ。

G20とクアッドに話を戻せば、日本がクアッドに肩入れする反面、インドとオーストラリアは、かえって距離を置いているようにも見えたのが、今度のG20の特徴であった。

オーストラリアはG20において中国の外交を統括する王毅中国共産党中央政治局委員と会談を行っている。双方は、中豪貿易関係をコロナ前の状態に戻そうと努めていることを世界に印象付けた。モリソン政権時代とは一線を画した外交だ。

G20での外相会談を報じたオーストラリアのテレビ局は、これを「関係改善の象徴」と報じたほどだ。そうであればクアッドに対するオーストラリアの態度にも変化が訪れたと考えるべきだろう。モリソン時代にはアメリカよりも積極的に中国を攻撃していたことを考えれば、隔世の感と言わざるを得ない。

積極性を欠いたのはオーストラリアだけではない。インドもまた同じである──
(『富坂聰の「目からうろこの中国解説」』2023年3月5日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください。初月無料です)

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1964年、愛知県生まれ。拓殖大学海外事情研究所教授。ジャーナリスト。北京大学中文系中退。『週刊ポスト』、『週刊文春』記者を経て独立。1994年、第一回21世紀国際ノンフィクション大賞(現在の小学館ノンフィクション大賞)優秀作を「龍の『伝人』たち」で受賞。著書には「中国の地下経済」「中国人民解放軍の内幕」(ともに文春新書)、「中国マネーの正体」(PHPビジネス新書)、「習近平と中国の終焉」(角川SSC新書)、「間違いだらけの対中国戦略」(新人物往来社)、「中国という大難」(新潮文庫)、「中国の論点」(角川Oneテーマ21)、「トランプVS習近平」(角川書店)、「中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由」や「反中亡国論」(ビジネス社)がある。

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