5月の広島サミットで「首相暗殺テロ」発生の可能性も。日本外交の“隙”を狙う隣国に注意せよ

2023.04.19
 

日本外交を窮地に追い込む首脳暗殺テロ

だが、今回の事件を受け、今後は広島サミットがテロの標的になる恐れが出てきた。当然ながら、現在日本警察に向けて厳しい目が向けられてはいるものの、世界的にも日本警察の能力は高く、G7サミットでテロ組織が大規模なテロを実行できる可能性は極めて低い。サミット会場周辺や各国大統領、首相が宿泊するホテル、広島駅や八丁堀や流川など人が集まる場所では厳重な警備体制が敷かれるだろう。

しかし、今回の事件からも分かるように、怪しいバックグランドもない個人による一匹狼的なテロを防止することは簡単ではない。本音を言えば、いくら警察の警備能力を向上させ、実現可能な最高レベルの警備体制を敷いても、日本が独裁国家でない限り、一匹狼的なテロは防止できない。ゼロコロナ的なテロ対策を敷かない限り不可能だろう。

そして、G7サミットのタイミングに合わせ、日頃から社会的な不満を抱く者による“目立ってやろう”との思いで無差別殺傷事件などが起これば、各国メディアも受け止め方はそれぞれとしても現地で報道はすることだろう。しかし、今回の事件のように、各国指導者を狙った一匹狼的な事件が起これば、それは原爆投下第2幕に等しい。当然ながら、それが既遂になるか、未遂で終わるかにもよってもその後の状況は違うだろうが、そういった事件が起こった時点で岸田首相がほしい“自由民主主義諸国による中国やロシアへの強い牽制的メッセージ”は出せなくなる。それどころか、各国首脳を狙った暗殺事件などが起これば、世界の日本警察への不信感が一気に強まるだけでなく、日本外交も窮地に追いやられることになろう。

確実に日本の隙をついてくる中国

今、米中対立の狭間で一番厳しい立場にあるのは欧州でもオーストラリアでもない、我々日本なのだ。それを多くの日本人が分かっていないのが最大の問題だが、今回のサミットで議長国として日本は、欧州やオーストラリア、インドなどが対中国で結束してくれるよう最大限努力しなければならないのだ。その際、暗殺テロなどが起これば、日本が抱える対中国での難題(尖閣や東シナ海での油田開発、そして台湾など)を各国は理解したくなくなるだろう。

そして、そういった隙を中国は間違いなく突いてくる。最近、中国は日本が対中で米国と結束することに強く怒っているが、G7サミットで暗殺事件などが発生し、日本と米国、欧州との間で亀裂が広がれば、それを利用して日本へ経済的圧力を強化し、台湾情勢でもよりいっそう強硬的な姿勢に転じてくる可能性がある。G7サミットで和歌山のような事件が起これば、上述のようなことが考えられる。

image by: 首相官邸

アッズーリ

専門分野は政治思想、国際政治経済、安全保障、国際文化など。現在は様々な国際、社会問題を専門とし、大学などで教え、過去には外務省や国連機関でも経験がある。

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