能登半島の大地震で露呈。ミサイルは買っても年寄りは守らぬ国の無策ぶり

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ゴールデンウィーク中の5月5日、北陸地方を襲った最大震度6強の地震。人的被害こそ大きなものではありませんでしたが、深刻な高齢化に直面している日本社会が、総力を上げて解決すべき問題が突きつけられたのは確かなようです。今回のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』では健康社会学者の河合薫さんが、自然災害時の高齢者避難の難しさについて解説。そのような状況下において、防災関連予算額を減少させる国の姿勢に疑問を呈しています。

プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。

超高齢社会を守るカネはどこ?

またもや大きな地震による被害がでてしまいました。

震度6強の地震に見舞われた石川県珠洲市は、県内の市町でもっとも高齢化が進んだ地域です。同市の住民の52%が65歳以上に対し、県全体では30%。実際、テレビの映像を見ていても、家が倒壊して呆然とするおばあさんや、家の外の石垣に座り込み「疲れた」とつぶやくおじいさんで、ほとんど若い人が映りません。地震に追い討ちをかけるように降り出した雨は、48時間で117.0ミリの雨量を記録し(8日午前6時50分まで)、5月としては統計開始以来、最も多くなりました。

高齢の住民は自力で屋根の補修ができず、雨漏りに苦しめられるケースも相次ぐ事態に。どこが避難所か分からないし、そもそも遠くて行くのは難しい。自宅にとどまった人、家の修理のためのブルーシートを市が配布していることを知らなかった人、災証明書の受け付けがはじまったことを知らない高齢者も少なくなかったそうです。

地震などの自然災害時の高齢者避難の難しさが表面化したのは、1995年1月に起きた阪神淡路大震災です。兵庫県の94年の高齢化率は12.9%でしたが、死者数6,402人のうち、65歳以上の高齢者は3,181人、全体の49.7%とほぼ半数。被害がもっとも大きかった長田区では56.1%に達しました。

東日本大震災では、ひとり暮らしの高齢者などを避難させようとした消防団員や地域の住民も多く亡くなり、地域の絆の強さを物語るとはいえ、これまでの震災には見られない痛ましい事態も起きました。

住民の高齢化率は都心でも加速していて、2002年の17%から2022年は23.5%、高齢者人口は312万人で過去最高を記録。2025年には23%、2035年には25.4%と、4人に1人が高齢者になると推計されています。

地方自治体では防災訓練を積極的に実施していますが、高齢者はそもそも防災訓練に参加しずらい。足が悪かったり、あることを知らなかったり、めんどくさいと参加しない人も少なくありません。

また、福祉避難所の設置も進められていますが、2016年の熊本地震では福祉避難所に地震発生から避難できた高齢者はわずか70人。施設で働く人たちも被災していたので、「受け入れたくても受け入れられない」という厳しい現実でした。

ご存知ない方のために補足しておきますが、福祉避難所は災害などで避難する際に、高齢者や障害者を受け入れることができる避難所で、一般避難所に避難したのち必要に応じて移る二次的な避難所です。

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