「同性婚」どころか「LGBT差別禁止法」もない人権後進国ニッポンの現状

km20230614
 

6月13日に衆議院で可決された「LGBT理解増進法案」。しかしその内容は、性的マイノリティーの人権を守るには極めて不十分な「骨抜き法案」と言っても過言ではないものでした。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、G7参加国の中で日本だけが同性婚を認めず、LGBTへの差別が禁止されていないという不名誉な事実を紹介。その上で、先日行われたG7広島サミットで日本が他の6カ国と採択した首脳宣言を取り上げ、岸田首相の「二枚舌」を強く批判しています。

【関連】「同性愛は精神疾患」と書いた冊子まで配布。LGBT法案成立を強烈に嫌悪する保守系団体の名称

人権後進国ニッポン。岸田首相はどの口で「心にもない宣言」を述べているのか?

「同性婚が認められないのは憲法違反」だとして、福岡市や熊本市の同性カップル3組が国を相手に起こした訴訟で、福岡地裁の上田洋幸裁判長は6月8日、「憲法24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない」、つまり「違憲状態」との判断を下しました。これで、全国5カ所の地裁に起こされていた同様の訴訟の判決が、すべて出そろったことになります。

結果は、2021年3月の札幌地裁が「違憲」、2022年6月の大阪地裁が「合憲」、2022年11月の東京地裁が「違憲状態」、2023年5月の名古屋地裁が「違憲」、そして、今回の福岡地裁が「違憲状態」でした。同様の5件の訴訟で、「違憲」が2、「違憲状態」が2、「合憲」が1という結果ですが、唯一「合憲」と判断した大阪地裁も、頭ごなしに「合憲」と決めつけたのではありません。

大阪地裁の土井文美裁判長は、総合的な判断としては「現行の憲法の内容には違反していない」としながらも、「現行の憲法が同性婚を禁止していると解釈すべきではない。今後、社会状況の変化によっては、同性婚を認める立法措置を取らないと憲法違反になりうる」と言及したのです。

また、特に画期的だったのは、今年5月30日の名古屋地裁の判決です。名古屋地裁は、「法の下の平等」を定めた憲法14条だけでなく、「婚姻の自由」を定めた24条に違反すると判断したのです。初めて「違憲」と判断した札幌地裁では、憲法14条だけに絞って判決を下しましたが、名古屋地裁は、自民党政権が同性婚を認めないための最大の拠り所としていた憲法24条にも踏み込み、自民党の解釈を真っ向から否定したのです。

名古屋地裁の西村修裁判長は、「男女間の結婚を中核とした伝統的な家族観は唯一絶対のものではなくなり、わが国でも同性カップルに対する理解が進み、承認しようとする傾向が加速している」と述べ、さらに「同性愛者を法律上の結婚制度から排除することで、大きな格差を生じさせ、何ら手当てがなされていないことについて合理性が揺らいでいると言わざるをえず、もはや無視できない状況に至っている」として、憲法24条2項の「婚姻に関する個人の尊厳と両性の本質的平等」に違反すると判断しました。

これは、世界の先進国から見れば、極めて当たり前の判断ですが、「人権後進国」の日本としては、過去に例のない画期的な判断となりました。そして、この日本の「人権後進国」ぶりが見事に露呈されてしまったのが、5月19日から開催された「G7広島サミット」でした。

G7の7カ国のうち、フランス、ドイツ、イギリス、カナダ、アメリカの5カ国は「婚姻の平等」の下に「同性婚」を認めており、残りのイタリアも「同性婚」と同等の権利を保障した「登録パートナーシップ法」が整備されています。それどころか、フランス、ドイツ、イギリス、カナダの4カ国には「LGBT差別禁止法」があり、残りのアメリカには同等の公民権法や州法が、イタリアにも同様の「性的偏向による雇用差別禁止法」などが整備されています。

この記事の著者・きっこさんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 「同性婚」どころか「LGBT差別禁止法」もない人権後進国ニッポンの現状
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け