楽天が日本郵政に負わせた850億円の巨額特損。三木谷会長に次の手はあるのか?

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2021年3月に楽天グループに出資し資本・業務提携した日本郵政が、楽天の株価が出資時の半値以下となってことで850億円もの特別損失を計上しました。同グループは今後5年の間に1兆2,000億円を超える社債償還も控えており、まさにこれ以上にない窮地に立たされていると言っても過言ではありません。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川さんは、赤字の原因となっているモバイル事業の売却の可能性を検討。楽天モバイル単体に旨味はないと厳しい見方を示しています。

 

株価暴落で日本郵政に負わせた850億の特別損失。楽天の三木谷会長はこのまま沈むのか

日本郵政は850億円の特別損失を計上すると発表した。理由はおととし、楽天グループに対して1500億円を出資して資本提携を行ったものの、楽天グループの株価が大幅に下落していることを受けたものだ。

そもそも、当時、資本提携をするといっても中身はかなり不可解だった。郵便局内に楽天モバイルのショップを出すという話であったが、それであればむしろ逆で、楽天モバイルが日本郵政に出資して、場所を確保してショップを出すというのが本筋だろう。

日本郵政が楽天グループに出資して、さらに出店の費用を負担するのであれば、郵便局店舗を200店も減らす必要はないはずだ。郵便局は局舎内のイベントスペースを1日数万円で貸し出している。楽天モバイルとしては、1日数万円という出店費用の負担が耐えきれなくなって一部撤退を余儀なくされたはずだ。

提携当時、楽天グループの株価は1145円だったが、6月30日現在の終値は499円と半分以下に落ち込んでいる。すでに5月に行った公募増資の金額も下回ってしまった。楽天グループは今後、5年間で1兆2000億円を超える社債償還を行わなければならない。

設備投資がかさむ楽天モバイルを早急に他社に売却して損切りするのが手っ取り早いのだが、総務省が厄介なルールを作ってしまったため、売却時には周波数を返却しなくてはいけない。既存3社が楽天モバイル単体を救済したとして、使い放題を求める450万ユーザーを抱え込むのは経営にとって負担でしかなく、手を伸ばす意味が無いのではないか。

また、Amazonであれば救済可能だという意見もあるが、他社が買収したところで、今後も数兆円規模の設備投資が必要なわけで、投資を回収できる可能性は極めて低いだろう。

一部メディアでは「楽天グループ解体間近」なんて記事が出ているが、万が一の事があった場合、個人的には解体ではなく、「経済圏をまるごと買収」というのが現実的なような気がしている。既存3社も楽天モバイル単体ではなく、楽天グループ全体、経済圏ごと手に入るのであれば、俄然、興味がわいてくるだろう。

NTTドコモからすれば、銀行や証券が手に入るのは魅力だ。KDDIであれば楽天市場といったECサイトが欲しくてたまらないはずだ。ソフトバンクにしても、楽天カードが手に入れば、最強の経済圏をつくることができる。

いずれのキャリアも楽天グループと重複する金融やポイントサービスがあるが、すでに所有するアセットと統合すれば、日本最大級の金融やポイントサービス経済圏が生まれる。

2024年にも窮地に立つ楽天グループを何処が助けるのか。それとも、三木谷浩史会長の逆転ホームランはあるのか。残された時間は短い。

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日経トレンディ編集記者として、ケータイやホテル、クルマ、ヒット商品を取材。2003年に独立後、ケータイ業界を中心に執筆活動を行う。日経新聞電子版にて「モバイルの達人」を連載中。日進月歩のケータイの世界だが、このメルマガ一誌に情報はすべて入っている。

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