とにかく逃げちゃえ。林真理子日大理事長が今すぐ取るべき「大胆な出口戦略」

Tokyo,,Japan,,16th,,May,,2018.,The,Nihon,University,On,The
 

アメリカンフットボール部の薬物問題に関する対応を巡り、各方面から批判を浴びている林真理子日大理事長。まさに窮地に立たされていると言っても過言ではない林氏ですが、この先どのような手を打つのが正答なのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、林氏がこのまま同大組織に関与するのはダメージが大きすぎると断言。その上で彼女に対して、大胆な「出口戦略」を提案しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年8月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

ズルズル関わるのは悪手。今すぐ日大から「逃げ出す」べき林真理子氏

林真理子さんという方は、理念より実利、論理より直感、絶対的な善悪より関係性、という、つまり人間の持っている身体性を、うまく言語化することで、仕事をしてきた方です。

ですから、日本大学の改革とか、日本大学における不祥事における透明性向上というようなテーマは、全くこの方の得意分野ではありません。ですから、今回の一件に関して見事に世論を納得させるような会見だとか、真の悪を暴いて組織を改革するような陣頭指揮などを期待するというのは、全くの間違いですし、失礼千万だと思います。

この方の40年を超える文筆活動を見ていれば、そんなことは容易に分かるはずです。では、このままで良いのかというと、そんなことはありません。

問題は、林氏の読者像が意外と複雑なことです。「理念より実利」というハヤシ風の演歌というのは、そのまま読者と共有されているのではないからです。どういうことかというと、例えばオペラが好きでウィーンまで出かけたとか、バッグを買いにパリに、といった行動については、林氏も読者も「そうした言動が100%格好いいワケではない」ことを分かって、ネタにしているわけです。

つまり、下手をすると「成金趣味」になる世界を、故意に過剰に表現する、あるいは露悪的に表現することで、その自分中心の世界全体を一種のパロディにして、全体をハヤシ劇場という別世界に連れて行くことが成立しているわけです。

その前提としては、実は林氏の読者は、「林氏が書いている内容そのもの、つまりオペラとかバッグとかいう成金スレスレ趣味より、かなり高いレベルにいる」ということがあります。実は知的で、実はかなり理念的でもあり、ただ、平凡な芸術至上主義とか単調な(しかし本物の)教養主義では退屈なので、林氏の「一見すると成金スレスレのバイタリティと、趣味の良い自虐」という「複雑系フレーバー」を余裕をもって楽しむ層ということになります。

では、日大の状況というのは、どうでしょう。同じように「複雑系フレーバー」として、林氏の読者に楽しんでもらえるかというと、それは難しいと思います。何といっても、林氏の読者は知的な階層です。日大のゴタゴタについては、それこそ60年代の日大闘争の歴史(特に当時の大学の前近代的な体質)を遠景に、近景としては悪質タックル事件から、今回の大麻+覚醒剤の隠蔽事件に至るまで、「理念より現実」だなどという甘い見方はしてもらえないと思います。

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