ウクライナ関係者すら「戦争目的がわからない」
最近、調停グループの会合においてウクライナの関係者に聞くと「だんだん、ウクライナが結局のところ、何を目指し、どこに向かおうとしているのか分かりづらくなってきた」と口々に言いだしました(表立っては決して口にできないことですが)。
中には「欧米諸国からの支援が拡大してくるにつれ、ウクライナとしては退くことが出来なくなったという見方も事実だと思うが、これを機に恐ろしいロシアに一泡吹かせてやろうという欲が多くなってきているようにも感じている」という意見も出ました。
その根拠となっているのが、領土防衛とは方向性の違うロシア国内への攻撃の実施です。
モスクワのビジネス街であるモスクワシティへの無人ドローンによる爆撃やロシア国内の施設への連日の攻撃は、すでに防衛のレベルを超えており、ロシアへの攻撃という“双方向性”を示す本格的な戦争状態(交戦状態)に発展していることを示しており、それはロシアの自衛権を発動させ得るレッドラインを超えているものと考えられます。
これ、実はロシアの核兵器の使用にかかるドクトリンの条件にも当てはまりかねない事態であり、交戦に投入されている兵器や装備のアップグレードに加えて、戦争・戦闘のアップグレードとも考えられる状況です。
この状況はNATO諸国、特にアメリカ政府がウクライナに再三“超えてはならない一線”と警告し続けてきたものですが、防衛が報復に変わり、能動的な攻撃に繋がってしまっている現状を、すでにアメリカ政府も止められないという負のスパイラルに引きずり込まれています。
NATO諸国の中でも抜きん出て対ウクライナ支援をしているアメリカは、予想以上に苦戦しているウクライナの反転攻勢の状況への批判のみならず、ロシアを攻撃し始めたウクライナを止められないことに対する政府への非難にも直面し始めており、来年に大統領選を控えるバイデン政権と民主党にとっては、非常に悩ましく苦々しい状況に陥っていると言わざるを得ません。
最近では“できるだけウクライナに有利な条件での一時停戦”を当面の“勝利”の条件に挙げているアメリカ政府ですが、この姿勢は、対ウクライナ支援を拡大している欧州各国からは賛同が得られておらず、ゆえにウクライナに対する姿勢も一貫していません。
欧州各国の不同意の背景には、事前に相談なく、アメリカ軍をアフガニスタンから一斉撤退させたバイデン政権の前例(前科)があり、同じ船に乗っている限りは勝手なことはさせたくないという意地もあるように見受けられます。
このような“外野”の内輪もめと、国内でのゴールに対するイメージのずれが、ウクライナ政府と軍にとっての“勝利”のイメージも狂わせ、人的犠牲を出し続けながらひたすらロシア軍と前線で対峙するしかないという悪循環を生み出しています。
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