打倒プーチンに執念も「勝利条件が高望みすぎる」ウクライナの苦悩。戦争調停の現場で今何が議論されているか

 

戦争を止める気など毛頭ないプーチン

利害調整にてこずっているようですが、そのあたりはプーチン大統領の権威基盤を築く中で得てきた術がありますので、プーチン体制は揺るがず、対ウクライナ戦争の“次の段階”に向けた準備を着々と進め、すぐに実行に移すものと思われます。

つまり、ロシアはこの戦争(特別軍事作戦)を止める気は毛頭なく、ウクライナが何らかの形で崩壊するまで手を緩めないものと思われます。それがウクライナの軍事的な敗北や降伏を通じたものなのか、ウクライナ国内の体制の崩壊と混乱を伴う形での内部崩壊による終戦なのかはまだ見えてきませんが、プーチン大統領は確実にウクライナを潰しにかかっています。

そして状況は、欧米諸国の国内政治日程との絡みで、各国のウクライナ離れを加速させ、「一時停戦にウクライナが乗り気でないのなら、これ以上は支援できない」という形で孤立へと向かうようにセットされているように見えます。

これから“勝利”に向けて対ロ反転攻勢を強めるとのことですが、ウクライナはどのように今後、ロシアとの戦いを進めるつもりなのでしょうか?

いろいろと入ってきている分析をもとに判断すると、このロシア・ウクライナ戦争は、“ウクライナの全領土の回復”を目的、そして勝利の条件と設定するのであれば、短く見ても3年から4年間は、ウクライナが優位に戦闘を進める必要があります。

問題は【それを支える欧米各国の支援が継続するかどうか?】、そして【経済力も、軍事力もはるかに大きなロシアを相手に、ウクライナがどこまで国内の政治的な争いを抑え、戦いを継続できるか?】という点です。

ウクライナには、侵略後、NATOなどに求めた武器弾薬の9割は届いていますが、その供与のスピードの遅れと、訓練不足、そして旧ソ連型の指揮系統を持つ軍と、欧米からの最新兵器を導入する現場の命令系統がうまくかみ合わないという大きなオペレーション上の問題があり、それらすべてを早急に克服して、フルスロットルで対ロ戦線に当たらないといけないという問題があります。

反転攻勢がスタートしてからのウクライナ東南部の勢力図を眺めてみると分かりますが、実際には反転攻勢はほとんど効果を出せておらず、ウクライナは領土を回復できていないという事実が突き付けられます。

特殊部隊によるゲリラ作戦が至る所で繰り広げられていますが、特殊部隊の特徴通り、それは領土の回復や占領を意味せず、ただサプライズを与えて混乱させることのみを目的とするため、領土の回復を目的、勝利の条件と置くならば、軍事戦略上はあまり意味がないものと思われます。

確実に戦争は長期化し、長期化するほど、経済力と軍事力で圧倒的な差を起こるロシアに有利になってくるものと思われます。

個人的には、ウクライナにも近しい友人がたくさんおり、この戦争を、調停を通じて終わりに導き、何とか助けられないものかと思案していますが、選択肢は日に日に狭まってきているように感じています。

勝利を目指して戦い続ける先に、どのような未来がウクライナに、ロシアに、そして世界に待っているのか。

そしてその未来において、我が国日本はどのような立ち位置にいるのでしょうか?

刻一刻と入ってくる情報と分析に触れながら、いろいろと考え、働きかけを続けています。

国際情勢の裏側でした。

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