だから日本は衰退した。タイパに耳を傾けぬ過去世代が加速させた“組織の腐敗”と“競争力の喪失”

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どんな職場であれいつの世も存在する世代間ギャップ。直近では新人の「電話嫌い」と「タイパ好き」が大きな話題となっていますが、彼らを管理・指導してゆく立場の人間は、このような状況とどう向き合うべきなのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉さんが、「電話」「タイパ」それぞれについての具体的な対応策を紹介。殊にタイパについては、その否定は「ビジネスにとって自殺行為」と強く警告しその理由を解説しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2023年11月14日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

猛批判される新社会人。「電話嫌い」と「タイパ好き」の何が悪いのか

これは日本の場合ですが、新しく社会人になった世代に対する過去世代の批判がかなり強まっているようです。具体的には、「電話嫌い」と「タイパ好き」ということです。

まず「電話嫌い」ですが、これは全く当然の話だと思います。今の若い世代は、固定の地上線電話というのは、ほとんど経験していません。また対面でも、原則として初対面同士の会話は避けるという社会で育ってきています。初対面同士の会話というのは、余程注意しないとトラブルの元だし、特に敬語のレベルなどでエラーを出してしまうと、執拗な言葉の暴力の被害にあう中では、リスク回避という意味合いもあるわけです。

ですから、例えば部課の代表電話というのがあって、昼休みとか時間外とかに電話番を置いて、新入社員などに電話を取らせるというのは、大きな抵抗感がある、というのはよく考えれば理解できる話です。

よく考えれば、部課の代表電話などというのは、今どき本当に必要なのかは考え直したほうがいいと思います。民間だろうが官公庁だろうが、そしてアドミ的な仕事であろうが、営業であろうが、仕事の基本はメールという時代です。その上で、どうしても電話でというのは、局面が限られています。

  1. 初対面だが、即答を期待する場合。
  2. 面識があるが、非公式なので対話の証拠を残したくない場合、あるいは言外の微妙なニュアンス的な情報交換をしたい場合。
  3. 慶弔や祝意など感情的なメッセージをリアルで送りたい場合。
  4. 番号リストを片手にダメ元で営業などの電話をかけまくる場合。

これ以外にはどうしても電話でというケースはほぼゼロではないかと思います。まず2)とか3)は新人がいきなり電話を取るというケースではありません。2)については、こうした種類の電話を頻用する人は業務用の携帯を運用しているか、秘書が通話を管理しているはずです。3)は受け電話ではありません。

ですから、基本的に新人に電話をさせるのは1)か4)の局面です。このうち、1)は理不尽なクレームや大量の電凸などの可能性があるので、現在では多くの組織が電話を受けない対応に移行しつつあります。または、電話専門のコールセンターに回す対応が可能です。ですから新人に電話を取らせるなどというのは時代遅れになると思います。

さらに言えば、コンプラ、特に守秘義務に関して高い情報管理が求められる場合には、担当者以外による情報共有、隣の部課の電話を取るなどというのは、そうした行動事態がダメと言う時代でもあると思います。また4)の電話作戦的な行動も、今は効果よりもマイナスイメージが強い時代であり、意味はドンドン薄れていると思います。

そう考えると、新入社員に「イヤイヤ電話を取らせる」とか「かけさせる」といった経験をさせるというのは、この際ですから止めてしまってはどうでしょうか。多くの企業がすでに「問い合わせはウェブフォームに」とか、あるいは「コールセンター回し」という対応をしており、それで社会的に悪印象になる時代でもないからです。

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