疑われて当然のボイスレコーダー、航空機事故の免責制度が必要
ボイスレコーダーの記録についは、著者は違和感はないとしています。
しかし、裁判でボイスレコーダーのすべてのデータが公開されなかったことから、なにか隠していると思われてもしかたがない状況です。
著者はそもそも事故調査よりも警察捜査が優先される日本では、航空機事故の本当の原因を解明することは非常に難しいとしています。アメリカでは故意でなければ、航空機事故で機長が責任を問われることがなく、事故調査と再発防止が優先されるのです。
JAL123便事故で、真実を明らかにして再発防止を優先するような姿勢が事故調査委員会にないのは、こうした制約から、真面目な人だけが損をする体制にあることが原因なのかもしれません。
警察には証拠保全の優先権を与え、立件する場合には裁判所で事故調査報告書が使われることを容認している。これでは事故の当事者が事故調に本当のことをすべて証言するなど不可能に近い(p99)
JAL123便墜落の闇を暴くには、運輸安全委員会の独立が必要
JAL123便墜落事故に闇があることがわかりました。これだけ多くの関係者がいる中で、だれも真相を話そうとしないのはなぜなのでしょうか。
日本の航空機事故の本当の原因を明確にするためにも、アメリカのように運輸安全委員会を完全に独立させ、関係者に過失の免責を与える必要があるのだと思いました。
日本の航空機行政が遅れていることがよくわかりました。杉江さん、良い本をありがとうございました。
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この本で私が共感した名言
・米軍の戦闘機が民間機に急接近したことがある・・自衛隊や米軍は民間航空機を仮想標的として、訓練に利用することが十分ありえる(p60)
・雫石衝突事故をめぐるその後の裁判では、自衛隊側はなんと全日空機のパイロットに過失があったと主張した・・有視界飛行方式で訓練していた軍用機のほうに見張り義務があるのは当たり前である(p11)
杉江 弘・著 宝島社・刊
著者経歴
杉江弘(すぎえ ひろし)・・・元・日本航空(JAL)機長、日本エッセイスト・クラブ会員。愛知県豊橋市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日本航空入社。ボーイング747の飛行時間は約1万4000時間を記録し、世界で最も多く乗務したパイロットとしてボーイング社より表彰を受ける
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image by: 運輸安全委員会 (Japan Transport Safety Board), CC BY 4.0, ウィキメディア・コモンズ経由で