2025年7月5日に起こる大事象は「予言の自己成就」か「予言の自殺」か?人間の思考が未来を書き換える不思議なメカニズム

 

人々が力を合わせて未来を書き換える「予言の自殺」

もう一方では、逆のケース、「予言の自殺」というものもあります。

つまり、皆がその「不吉な予言」を避けようとして行動し、力を合わせて社会的な対抗策を講じることにより、予言の実現が阻止されるという場合がそれです。

1970年5月のことです。東京都新宿区牛込柳町において民間団体の実施した集団検診により、多数の者が「鉛中毒」と診断されました。これが新聞等で報道され、大きな社会問題になりました。

自動車排気ガスに含まれる鉛が大気汚染を引き起こした結果ではないかと多くの人が考えました。

その後の精密な検査の結果、「鉛中毒」と呼べるレベルに達している住民はいなかったものの、血中・尿中鉛濃度とも、大気汚染程度の激しい地域の住民ほどその値は高いということがわかりました。

これは人体が大気中の鉛に汚染されていることを強く示唆する結果だったのです。

当時のガソリンには「オクタン価(ガソリンのアンチノック性、つまりノッキングを起こしにくい性質を表す指標)」を高めるために、鉛が混入されていました。この鉛がエンジンからの排気ガスとして街中に放出されていたのです。

このままでは、東京などの大都市に暮らす人々は皆『鉛中毒』になってしまう」こうした「予言」、というよりも「危機意識」が急速に拡散し、国民が共有するところとなりました。

国民の声は政府を動かし、産業界も「公害撲滅」に立ち上がり、具体策と法律の整備が進みました。1975年にはレギュラーガソリンが無鉛化され、いわゆる「ハイオク」のプレミアムガソリンについても実質的に無鉛となったのです。

その背景には、トヨタやホンダなどの自動車製造各社が、無鉛化されたガソリンでもノッキングを起こさない燃焼効率の良いエンジンの改良に取り組む努力を重ねたということがあります。

さらに、自動車排気ガスの滞留を減らすために、道路渋滞の解消を図る地道な努力もその後半世紀に渡って続けられた、ということも付け加えておくべきでしょう。

これは見事な「予言の自殺」の好例と言えるでしょう。そしてこれは『地上の星』で取り上げてもおかしくない、なかなかの美談だと思います。

このように、社会的動物である人間は、「回避可能」な社会的問題なら、何とか力を合わせて対処することもできるのです。

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