首相は「双方の国益に寄与する合意」と本気で思っているのか
かねてより本メルマガでは主張してきましたが、トランプ2.0革命は、100年に一度というくらいに世界秩序を大きく転換させる動きといえます。しかしながら、日本政府も日本国民の多くもその本質を正しく見極めることなく高をくくっているのではないでしょうか。
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対米関係についても、オバマ政権時やバイデン政権時と大して変わらないスタンスで捉えていて、トランプが去ればまた元に戻るようなイメージを持っているのかもしれません。
穿った見方をすれば、日本側としては、何とか関税率だけは下げてその言質を取りつつ、他の話についてはとにかくトランプを喜ばせるための大風呂敷を広げて口約束だけしておけばよい、そのために、敢えて合意文書を作るなどという自らを縛るようなことはしない、という算段なのかもしれません。しかし、米国のこの変化は不可逆的なもので、もはや民主党政権に戻ることすらないと考えておいた方が良いと思います。
ちなみに、現在米国で大騒動になっているのは、民主党政権時代の不正や悪事の数々です。エプスタインリスト開示の件とも絡んで、司法省や議会での調査が進んでいます。
本来、今の米国の状況を正しく見抜いていれば、トランプ2.0革命によってもたらされるさまざまな変化をこちらもチャンスと認識し、これまでの対米従属一辺倒の日米関係から脱却することを含めて、世界における日本の立ち位置を再構築するチャンスでもあるわけです。しかし、今回の関税交渉の顛末を見ていると、とてもそのような認識で交渉したようには思えません。
江戸幕府末期に結ばれた日米修好通商条約、あるいは100年前のワシントン海軍軍縮条約などは、日本に対して屈辱的ともいえる不平等条約でしたが、今回の日米関税合意はそれ以上に屈辱的なものといえるかもしれません。しかも、繰り返しますが、本当に合意文書を作らないのであれば、トランプ政権からまたいつでも難癖をつけられる余地を残しているといえます。
石破首相は、「舐められてたまるか」と言いながら、こんな無責任な交渉をしておいて、「日米双方の国益に寄与する合意がなされた」などと本気で思っているのでしょうか?このままでは、国内の反米ムードを高めることにもなりかねず、結果的には中国に付け入る隙を与えることにもなりかねません。
衆院選、都議選、参院選と三連敗の石破首相は、自民党内部からの退陣を迫る声に反発して続投を宣言しています。続投理由の一つにこの関税交渉を挙げ、「着実な実行のため全力を尽くしていきたい」と強調していますが、実行されると国益に反することになる項目があるのではないか、ということを国民は不安に思っているのです。本日から始まる臨時国会では、合意の全容をきちんと説明して欲しいと思います。
(本記事は『グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎のアタマの中 』2025年8月1日号の一部抜粋です。「戦争を考える(1)」と題した「今週のメインコラム」、「ラジオ体操」の効用を紹介する「今週のオススメ!」、「水素水に対する疑問」にアンサーした「読者の質問に答えます!」、「カプセルトイ」を取り上げた「スタッフ“イギー”のつぶやき」を含むメルマガ全文をお読みになりたい方は、この機会にぜひご登録ください)
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