軍事侵攻の「本当の理由」の隠れ蓑に用いられた麻薬対策
麻薬と言う観点からは、ベネズエラ攻撃後、トランプ大統領がメキシコやコロンビアに対して発しているメッセージは、まだ説得力があるように思いますが、それでもメキシコやコロンビアに対して何らかの攻撃を仕掛ける確固たる理由にはなりません。
メキシコとコロンビアに対しての脅迫ともいえる物言いは、恐らく今、アメリカ政府と協議中の別のディールでの妥協・譲歩を迫るための脅しではないかと思います(これについては、他にいろいろと言いたいことはありますが、諸事情により控えておきます)。
それはアメリカが80年前に創設に加わった国連の憲章第2条第4項にある「いかなる場合にも、主権国家に対して武力による威嚇または武力行使を禁止する」という内容に違反し、国連憲章が例外的に武力行使を認める第7条の「自衛権の行使」の要件も満たさないと考えるからです。
中国からメキシコ経由で米国に流入している合成麻薬フェンタニルや、コロンビアからベネズエラを経由して米国にコカインが流入している現実は、もちろん国際的な対策および厳しい規制と監視が必要で、かつこの問題に対して米国が国内において何らかの対策を取ることについて異論はありませんが、それが主権国家に対しての武力行使を容認するような理由にはなり得ないと考えます。
米国政府も恐らくそのことは十分に理解しているかと思いますが、(トレン・デ・アラグアのネットワークを通じた)米国内における麻薬の横行への危機感の高まりと、トランプ政権発足時に掲げた公約において“麻薬問題への対応”が挙げられていたこともあって、麻薬対策を“本当の理由”の隠れ蓑に用いたのではないかと推測します。
では、“本当の目的”は何だったのでしょうか?
【ベネズエラの石油利権を“独占する”こと】と【中南米諸国における中国・ロシアとの勢力争いを制すること】ではないかと考えています。
チャベス前大統領時代にベネズエラの国有石油会社(1970年代に設立されたPDVSA)が、外資と協力で行ってきた石油事業の過半数を掌握することを義務付けましたが、その後、特に外資を締め出した事実はなく、アメリカもシェブロン社を窓口にベネズエラの石油の主要な輸出先となってきました。
ただここ10年ほどは中国がベネズエラの石油の最大の輸出国となり、中国も原油の確保のため、チャベス政権時代から合計100億ドル以上の融資をPDVSAに行う最大の融資国にもなっていて、それが中南米地域を“裏庭”として認識するアメリカの外交方針に対する危機と捉える要因になったのではないかと考えられます(ちなみにロシアは、石油会社ロスネフチを通じて数十億ドルの融資を行い、同時にベネズエラ軍に武器などを供与している関係にあります)。
今回の攻撃を受けて、ベネズエラの石油セクターは完全に操業停止しており、再開のめどが立っていないと言われていますが、最大の輸出国中国は「ベネズエラ産の原油を調達できないのは残念だが、機能が開発するまではイラン産の原油で需要を満たすことができる」としていますが、今後、ベネズエラの石油セクターを米国企業が握り、再編することには、強い警戒を抱いているようで、今後、石油セクター再編のアレンジメントの内容によっては、新たな米中間の緊張が高まることも予測できる事態です。
ちなみにこの“ベネズエラの原油”ですが、現在、埋蔵量は世界トップの3,030億バレルと見込まれており、全世界の埋蔵量の約17%を占めますが、設備の老朽化などで石油関連施設がフル稼働できておらず、原油を要する国々から見ると、非常に魅力的な“案件・権益”に映ることは間違いないものと思われます。
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