なぜトランプはベネズエラ侵攻のカードを切ったのか?米軍という「世界最強の軍事力」の使い方を理解してしまった“西半球の独裁者”

 

報じられないベネズエラの原油を巡る米中ロの主導権争い

このベネズエラの石油を巡る相克は、報じられているようなものではなく、背後には米中(そしてロシア)との主導権争いが存在します。

その中で今回の攻撃に際し、見えてきたのが、これまで関係が深かったシェブロン社のコミットメントの強化ではなく、新たにエクソン・モービル社などをかませて、ベネズエラの石油セクターの再建を米企業に主導させ、事実上、アメリカのコントロール下に置くことで、原油を対中ディールの駒に用いようという思考(戦略ではなく)です。

ちなみにエクソン・モービル社と言えば、トランプ第一政権時に国務長官を務めたレックス・ティラーソン氏が、国務長官に就任する前までCEOを務めており、就任に際して現国務長官のルビオ氏がエクソン・モービル社のロシアとの親密さに対して懸念を示したことでも知られますが、現在、停滞はしているものの、トランプ政権がロシアに示したロシア・ウクライナ戦争の和平案の中にある“ロシアにおける石油・天然ガスセクターの共同開発”という軸の、アメリカ側の筆頭がエクソン・モービル社であることから、これは勘繰りに過ぎませんが、ロシアにおける開発とベネズエラの石油セクターの回復と近代化をパッケージにしたディールをロシアに仕掛けているのではないかと推察します。

もしそうだとすれば、今回はエクソン・モービル社に対してルビオ氏が噛みつかない理由が少しだけ分かる気がします。

そしてそのルビオ国務長官ですが、彼はキューバ系の移民で、キューバの現体制に対しては非常に厳しいスタンスを取ることで知られていますが、そのキューバの現体制が依存しているのがベネズエラの石油です。ベネズエラから石油を融通してもらう見返りに、キューバは軍事顧問やキューバの医療スタッフをベネズエラに派遣する関係を確立していますが、今回のアメリカによる攻撃でベネズエラの石油が実質上、しばらくは生産不能に陥り、輸出も停止することから、キューバではエネルギー安全保障に対する脅威となっています。

どうもルビオ国務長官はそれを“キューバ現体制潰し”の材料と見ているようで、現在、暫定大統領を務めるロドリゲス副大統領(ベネズエラ)との交渉でも、キューバとの関係遮断を要素に含めていると聞きます(同様のことは、同じくベネズエラの石油の主要な輸出先でもあるコロンビアにも言えるかもしれません)。

今回のアメリカの想定外の行動の背後にはいろいろな理由があるのかもしれませんが、主権国家に対して攻撃を仕掛けたという事実は到底受け入れがたく、米国内でも「明らかな主権侵害であり、それに米国民が巻き添えになった事実は受け入れがたい」と非難が相次ぐなど、事態の収拾はさほど容易ではないと思われます。

とはいえ、起こしてしまった事件をキャンセルすることは出来ず、すでに1月5日にMaduro大統領夫妻を法廷で訴追するというカードを切ってしまっているので、次のステップを考え、行動に移さなくてはなりません。

アメリカ政府はルビオ国務長官を交渉の窓口に据え、ベネズエラの今後について交渉をすることになりましたが、そこでカギになるのが、今回、ベネズエラの暫定大統領になったデルシー・ロドリゲス副大統領です。

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