「母さん戦争止めてくるわ」と高市自民圧勝。“滅びの美学”と“一国平和主義”が交錯する原理主義国家ニッポン

 

現象として要注意な参政党の「古史古伝」への興味

次に文化や宗教に関してですが、前々から思っているのですが、日本における宗教原理主義としては、法華系統に一種の結束がある一方で、結局のところは明治以降の新宗教がほとんどであるわけです。復古主義的に「あるべき過去へ回帰」という運動はあまり聞きません。例えばですが、廃仏毀釈に抗議して神仏習合にこそ日本本来の土着の宗教があるというような主張はあっても良いのですが、運動としてはありません。

神仏習合については、日本が大好きだが、明治以降の軍国とか東條の冒険主義は嫌いな欧米系の日本通が研究しているという話はあります。ですが、日本国内では、あまり目立った動きがないのは不思議です。そう考えると、かなりトンデモな話に属するわけですが、その一方で、参政党が古史古伝などに興味を持っているというのは、特筆に値します。勿論、良いことではないのですが、いわゆるクラシックな日本の保守主義では「物足りない」という意味では、現象として要注意ということです。

ちなみに古史古伝というのは、古事記・日本書紀は偽書だとか、その前に日本オリジナルの「ホンマツタヘ」という超古典があり、独自の文字もあったという「理論」です。カナ文字は漢字由来ではないのであって、超古代に日本文明があった的なストーリーで、江戸期の原理主義が妄想を逞しくしたのがルーツだと言われるものです。

後は、武士の文化へのアンチというのもロジックとしては成立するわけです。例えば、「わびさび」「禅」「能狂言」などは全て武家の文化であり、武家の文化は儒教の厳密性をマイルド化しつつ命を粗末にするのだから、プレ武家の時代が本物の日本というような打ち立ては可能は可能です。その点で、参政党は古史古伝に手を出しつつ、血なまぐさいナショナリズムは好きなので、雑食もいいところだと思います。

それはともかく、仏教で言うなら、鎌倉仏教は外来でダメだとか、いやいや親鸞の思想は日本オリジナルで傑出しているとか、宗教なのですから、もう少し温度感を吹き込んでもらっても良いのではと思うことがあります。神仏習合の是非ということでは、神道にしても道教、アイヌ信仰、修験道、半島の先祖崇拝など、様々なルーツの混淆していって成立した過程について、実証的な研究が不足しているのを感じます。

そう考えると、柳田学、折口学などの評価や継承、発展という流れの温度感もかなり低くなっています。その辺の基盤の欠落した中で、一気に古史古伝まで飛躍するというのは、やはり足腰の全く弱い話だと思います。

話は変わりますが、左派の中にある文化的原理主義として、「お上の取り締まりに対抗して性的習俗や性的表現の自由度を指向する」というものがあります。結構長い伝統があり、歌舞伎や浮世絵に埋め込まれた反権力イデオロギーが、戦後はアングラ文化だったり、風俗産業の正当化などになっているわけです。こうした動きの100%を否定するわけではありませんが、少なくとも国家権力を牽制するのであれば、そんな薄暗い話の優先度は下げるべきと思います。

それどころか、ジェンダーの平等、人権に反する形で売買春や性表現を美化するとか、その自由度を守ることを、他の表現の自由より優先するというのは、やはり逸脱だと思います。左派カルチャーの暗部、恥部と言ってもいいでしょう。

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