保守票の「懐に入る」ことで政治的自由度を獲得した高市首相
それはともかく、文化とか宗教になると、日本の場合は比較的狭い国であるにもかかわらず、大変な多様性を持っているわけです。元来が大陸、南洋、北方の3方面から民族や文化が流れて混淆していますし、その多様性が幕藩体制という地方分権間接支配によって定着しています。その結果として、峠を越えればアクセントだけでなく、語彙も違うし、味付けだけでなく食文化のメニューが違い、宗教も違うという多様性になっています。
個人的には、その多様性のダイナミズムを活用することが日本の経済や社会の活力を蘇生させる鍵だと思っていますが、反対にこの多様性が破壊されることには賛成できません。これはこれで一種の原理主義かもしれません。いずれにしても、政治の正統性にしても、文化や宗教の問題も、伝承が上手く機能せずに、世代から世代へと手渡しされる情報量が細っていくのは問題だと思います。
特に日本は古い国ですので、伝承されるべき情報量は膨大にあります。それが受け継がれず、少ない情報量しか伝わらない、そんな中で、ファンタジーが空白を埋める中で、かえって原理主義的な「こじらせ」が加速するのかもしれません。
経済社会の問題における復古とか原理主義というのは、こちらはまた長い議論になると思いますので、場を改めて展開しようと思います。ですが、一つだけ申し上げるのであれば、保守イデオロギーを求心力にする政治は、保守イデオロギーの暴走を抑止する効能があるというのは、度々指摘してきたことです。
そうなのですが、社会経済に残る原理主義的な旧弊については、保守イデオロギーとの親和性がそれこそ「岩盤のように」あるわけです。だからこそ、安倍晋三氏はあれだけの年月をかけても「アベノミクス第三の矢」つまり「構造改革」は実現できませんでした。また、菅義偉氏や河野太郎氏のような改革派は消耗戦を強いられて疲労しています。
そんな中で、保守イデオロギーを掲げて、保守票の「懐に入る」ことで政治的自由度を獲得した高市早苗氏は、もしかしたら雇用、DX、教育のステルス改革に関して実績を挙げるかもしれません。これまでの時点では、改革を声高に叫ぶことはないわけで、まだ多少の期待を持って見ているのは事実です。
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