会議では共感したのに現場が動かない。実行力ゼロの残念な組織を激変させる「ミドル層活用術」がコレだ!

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会議では共感してくれたはずなのに、現場は何も変わらない。自分が指示を出さない限り、物事が一向に動かない。そんな「熱意の空回り」に苛立ちや孤独感を覚えている経営者は少なくないはずです。しかし、その原因は社員の意識や能力の低さではありません。今回のメルマガ『ビジネス真実践×MBA』では、著者の中久保浩平さんが、ビジョンを「実行力」に変えるための具体的な3ステップを解説します。

なぜウチの会社は実行力がないのか? ビジョンを「実行力」に変える3ステップ

前回は、「人への投資」の核心として、会社の「ビジョン」と社員個人の「成長」を結びつける重要性についてお伝えしました。 経営者の皆様も、その「ビジョン(想い)」を社員に熱く語っていることでしょう。

しかし、その大切なビジョンを語っても、現場が動かない。

「会議では共感してくれたはずなのに、日常業務は何も変わらない」 「結局、自分が指示しないと物事が進まない」

そんな「熱意の空回り」や「実行力の欠如」に苛立ちや孤独感を覚えてはいないでしょうか。

ビジョンが「絵に描いた餅」になってしまうのは、社員の意識や能力が低いからではありません。 それは、経営者の「想い」を、現場の「具体的な行動」にまで翻訳し、実行を促す「仕組み」が欠けているからです。

ビジョンが届かない2つの根本原因

ビジョンを掲げても実行力が伴わない組織には、共通する課題があります。 ここでは、経営者の想いが現場に響かない主な理由を2点、見ていきましょう。

原因1:ビジョンが「抽象的」すぎる(=現場は「何をすればいいか」分からない) 原因2:ビジョンが「日常業務」と切り離されている(=ビジョンはビジョン、仕事は仕事)

この2つは、ビジョン浸透における初期のつまずきとして非常によく見られる現象です。 どちらも、経営者の「想い」と現場の「現実」との間に、深い溝があることを示しています。

原因1:ビジョンが「抽象的」すぎる(=現場は「何をすればいいか」分からない)

「お客様に最高の感動を届けよう」 「業界の常識を打ち破るイノベーションを」 こうしたビジョンは、経営者の想いとしては100点満点です。 しかし、現場の社員にとっては、あまりにも抽象的すぎることがあります。 例えば、経理担当の社員は「最高の感動を届けるために、自分は明日から具体的に何をすればいいのか?」が分かりません。 営業担当も「常識を打ち破れと言われても、目の前の売上目標を達成することで手一杯だ」と感じるでしょう。 ビジョンが「スローガン」や「お題目」に留まっていると、社員はそれを「自分ごと」として捉えることができません。 結果として、ビジョンは「社長がまた何か言っている」というBGM(背景音楽)のような扱いになり、行動には一切結びつかないのです。

原因2:ビジョンが「日常業務」と切り離されている(=ビジョンはビジョン、仕事は仕事)

もう一つの典型的な状態が、ビジョンが「額縁の中の言葉」になっているケースです。 立派な理念やビジョンが社内に掲示されてはいるものの、日々の業務や人事評価、会議の意思決定など、あらゆる「日常業務」と全く連動していない状態を指します。 例えば、ビジョンでは「挑戦を称賛する」と謳っているにもかかわらず、実際の評価制度が「減点主義」で、失敗した社員が厳しく叱責される文化だったとしたらどうでしょう。 社員は「ビジョン(建前)」と「日常(本音)」の矛盾を即座に見抜きます。 そして、「ビジョンは所詮、理想論。大事なのは、目の前の仕事をいかにミスなくこなし、上司に怒られないかだ」という現実的な判断を下します。 こうして、ビジョンと日常業務は完全に切り離され、「絵に描いた餅」が完成してしまうのです。

ミドル層が動かない本当の理由

経営者の「想い」と現場の「行動」。 この2つを繋ぐ「結節点」となるのが、中間管理職、すなわちミドルマネジメント(課長・部長層)です。 しかし、多くの経営者がこのミドル層の機能不全に悩んでいます。

ミドル層の葛藤(=経営者の「想い」と現場の「現実」の板挟みになっている)

経営者がミドルに「丸投げ」していないか?(=ビジョンを「翻訳」する役割を与えていない)

ミドルを「実行のハブ」に変える(=彼らこそがビジョン翻訳のキーパーソン)

ミドル層が機能しないのは、彼らの能力だけの問題ではありません。 経営者が彼らの役割を正しく理解し、権限を委譲し、そして彼らを「翻訳者」として育てているかどうかにかかっています。

ミドル層の葛藤(=経営者の「想い」と現場の「現実」の板挟みになっている) ミドルマネジメントは、組織の中で最もストレスのかかるポジションです。

上(経営者)からは 「ビジョンを浸透させろ」 「なぜ実行できないんだ」 と抽象的な指示でプレッシャーをかけられます。

一方、下(現場)からは 「そんな理想論を言われても、人手が足りません」 「具体的にどうしろと言うんですか」 と現実的な突き上げを食らいます。

経営者の「想い」と現場の「現実」。 この板挟みの中で、多くのミドル層は疲弊しています。 彼らにとって最も簡単な逃げ道は、ビジョンを語ることをやめ、単なる「現場の作業進捗の管理者」に徹することです。 これが、経営者から見て「ミドルが動かない」と感じる正体です。

経営者がミドルに「丸投げ」していないか?(=ビジョンを「翻訳」する役割を与えていない) 「ビジョンは伝えた。あとはミドルが現場に浸透させるのが仕事だ」 もし経営者がこのように考えているとしたら、それは「丸投げ」にほかなりません。 ビジョンという抽象的な「想い」を、現場の「行動」にまで落とし込む作業は、経営における最重要の戦略タスクです。 このタスクをミドル層に丸投げし、「彼らなら分かってくれるはずだ」と期待するのは、あまりにも酷な話です。 ミドル層は「伝達係」ではありません。 彼らに必要なのは、経営者が決めたビジョンを「どうやって自分たちの部門の行動に落とし込むか」という「翻訳の武器」と「裁量権」です。 経営者は、ミドル層と一緒に「翻訳作業」を行う必要があります。

ミドルを「実行のハブ」に変える(=彼らこそがビジョン翻訳のキーパーソン) 組織の実行力は、ミドルマネジメントの「翻訳能力」にかかっています。 彼らを、単なる「伝書鳩」や「現場監督」として扱うのをやめましょう。

彼らこそ、経営者のビジョンを現場の言葉に翻訳し、実行を指揮する「ハブ(結節点)」であり、最も重要な「経営パートナー」です。 「我が社が目指すビジョンを、君の部門では、どういう行動で実現してくれる?」 経営者はミドル層に対し、この問いを投げかけ、彼らが自ら考え、語り始める環境を整えることが求められます。

彼らが主体的にビジョンを語り始めたとき、組織の実行力は劇的に変わります。

実行力を生む組織浸透の3ステップ

では、具体的にどうすればビジョンを「実行」に変えられるのか。 そのための実践的な3つのステップをご紹介します。 これは、経営者の「想い」を「仕組み」に変えるプロセスです。

ステップ1:ビジョンを「戦略目標」と「各部門の役割(KGI/KPI)」に分解・翻訳する

ステップ2:ミドル層を巻き込み、「日常の行動指針(Do/Don’t)」にまで落とし込む

ステップ3:「実行」された行動を「評価」し、称賛する仕組み(人事評価や会議体)と連動させる

重要なのは、これらのステップを経営者一人で決めるのではなく、必ずミドル層を巻き込みながら進めることです。

ステップ1:ビジョンを「戦略目標」と「各部門の役割(KGI/KPI)」に分解・翻訳する

最初のステップは、抽象的なビジョンを具体的な「目標」に分解することです。 例えば、「お客様に最高の感動を届ける」というビジョンがあるなら、それを実現するための「戦略目標」は何か? 「リピート率を20%向上させる」 「顧客紹介件数を年間50件創出する」 といった具体的な数値(KGI:重要目標達成指標)に落とし込みます。 次に、そのKGIを達成するために、各部門は何をすべきかを定義します。 営業部門は「既存顧客へのフォローアップ訪問数(KPI)」かもしれませんし、開発部門は「顧客の声を反映した製品改善スピード(KPI)」かもしれません。 ビジョンが「数字」と「各部門の役割」にまで翻訳されて初めて、社員は「自分たちが何をすべきか」を具体的に理解できるようになります。

ステップ2:ミドル層を巻き込み、「日常の行動指針(Do/Don’t)」にまで落とし込む

数字(KPI)だけでは、まだ不十分です。 なぜなら、現場の社員は日々、数字に直結しない「判断」を迫られているからです。 ここで、ミドル層の出番です。 ステップ1で決めた部門の役割(KPI)を達成するために、現場では「具体的にどのような行動を(Do)」「どのような行動をすべきでないか(Don’t)」を、ミドル層が中心となって定義します。 例えば、「リピート率向上」が目標なら、 ・Do:一度取引のあったお客様には、3ヶ月以内に必ずフォローコールを入れる ・Don’t:売上にならないからと、過去の顧客リストを放置しない といった具体的な「行動指針」にまで落とし込みます。 この「翻訳作業」をミドル層が自ら行うことで、彼ら自身がビジョンを「自分ごと」として深く理解するようになります。

ステップ3:「実行」された行動を「評価」し、称賛する仕組み(人事評価や会議)と連動させる

最後のステップは、最も重要です。 それは「実行した者が報われる仕組み」を作ること。 ステップ2で決めた「行動指針(Do)」を実践した社員が、きちんと評価され、称賛される仕組み(人事評価制度、表彰制度、日々の会議での承認など)と連動させます。 逆に、ビジョンに反する行動(Don’t)が横行しているなら、それを是正する仕組みが必要です。もし、ビジョンと評価制度が矛盾したまま(例:「挑戦しろ」と言いながら「減点主義」を続ける)なら、社員は間違いなく「評価される行動(=減点されない行動)」を選びます。 「ビジョンに沿った行動が、自分たちの評価(報酬や承認)に直結している」 この納得感こそが、ビジョンを「絵に描いた餅」から「日々の行動原理」に変える最後の鍵です。

まとめ

ビジョンが「絵に描いた餅」になるのは、抽象的すぎる「想い」が、現場の「日常業務」と切り離されているからです。

経営者の「想い」と現場の「現実」を繋ぐキーパーソンは、ミドルマネジメントです。 彼らを「伝達係」ではなく「翻訳者」として巻き込む必要があります。

実行力を生む第1ステップは、ビジョンを「戦略目標(KGI/KPI)」にまで分解し、各部門の役割を明確にすることです。

第2ステップは、ミドル層が中心となり、目標を「日常の行動指針(Do/Don’t)」にまで具体的に落とし込むことです。

第3ステップは、ビジョンに沿った行動が「評価・称賛」される仕組み(人事評価など)と完全に連動させることです。

ビジョンは、ただ「掲げる」ものではなく、日々の業務の中で「実行する」ものです。 経営者の熱意(想い)と、現場の行動(実行)を繋ぐのは、ミドル層を巻き込んだ「仕組み」にほかなりません。 「絵に描いた餅」を、社員全員で「食べられる餅」に変えていく作業。 それこそが、経営者が今、最もコミットすべき仕事です。

image by: Shutterstock.com

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殿堂入りや商業出版も果たした【ビジネス真実践】が、MBAやコーチングでさらに磨きをかけ【ビジネス真実践×MBA】として3年振りに再始動します。リアルな事例を中心に、MBAによる理論やコーチングによる寄り添う視点を合わせ、思考し行動する力を養うヒントをお届けします。小手先のテクニックや受け身の学びではなく、成長と変化を本気で望む方だけ、ぜひご購読ください。

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【著者】 中久保 浩平 【発行周期】 ほぼ週刊

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