「減税をしなかった場合より生活苦が深刻になる」という問題
ただ、ギャンブル性のある重要な判断というのは、そうした意味で申し上げているのではありません。そうではなくて、1点、ただ1点の大きな問題が、この減税案にはあるということです。それは、
「減税をしても、国際市場から円と日本国債の信認を取り付けないと、より円安が進行して、国内の物価高を招いてしまう。その結果として、減税効果が消えてしまうし、むしろ円が過剰に売られた場合には、減税をしなかった場合より国民の生活苦は深刻になってしまう」
という問題です。実は、この問題については、高市政権には十分な防御策が仕掛けてあり、仮に国際市場が「減税を口実に円売りを仕掛け」ても、十分に論破可能である、そう考えているのだと思います。この「国際市場は論破可能」という見方、問題はこの点にあります。とにかく国際市場という相手のある話であり、高市政権が論破可能だと思っていても、相手が納得しなければ話は成立しません。
この「相手がある」ので論破可能と思っていても、本当に「納得してもらえるか」は、「やってみないとわからない」というのが、重要です。と言いますか、深刻な問題なのです。少々キツい言い方ですが、ギャンブル性があるというのは、この点についてなのです。
まず大前提として、
「日本は先進国中で最悪の<GDP比で250%の国家債務>を抱えている」
ということは、既に世界の投資家には知れ渡っています。ですから、1997年にアジア通貨危機が起きたときのように、円、あるいは日本国債が暴落の兆しを見せた場合には、世界から売りが殺到するでしょう。
その一方で、これもまた大前提として
「日本の経済規模、日本円や日本国債の発行残高は大きすぎて、例えば過去に潰れた韓国、タイ、ギリシャ、アルゼンチンのように潰せる規模ではない」
という認識があります。これはこれで間違ってはいないのですが、投資家の村上世彰氏が言っていたように、
「円の、あるいは日本国債の崩壊は、債務不履行などの劇的なショックとして起きるのではない。そうではなくて、ジワジワと円が安くなり、気がつくと信じられないほど円安になるという通貨のゆっくりした崩壊として起きる」
という見方があります。これはこれで、非常に怖い話で、特に「食糧とエネルギーを輸入に依存している」日本の場合は、デフォルトで潰れるよりも恐ろしいことになります。
そんな中では、世論の多くが「財務省は国民の生活苦を知らない」とか「岸田文雄は増税メガネだ」「財務省の増税路線はザイム真理教だ」などと批判しても、財務省は必死で耐えて来たのでした。
さて、こうした前提の中で、今回の減税論議をどう考えたらいいのでしょうか。
まず、食料品の消費減税というのは、どのような規模になるのかということですが、やはり非常に大きなものになります。この「減税額の大きさ」というのは、やはり問題です。食料品の消費税を1%にすると、現在の8%から7%分の税収が失われます。年間で数兆円規模の財源が必要になる可能性があります。
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