高市首相「食料品の消費税率1%」で“円の暴落”は回避できるか?日本経済を賭けた“減税ギャンブル”の行方

 

高市政権の「追加の国債発行は不要」という宣言の裏にあるもの

問題は、その財源が恒久的に存在するのかという点です。ところで、高市政権は今回の減税には財源があるので、追加の国債発行は必要ないと言っています。どういうことかというと、「外為特会の利益」があるからです。外為特会というのは、国の特別な会計のことで、簡単に言えば「外貨準備」のことです。基本的には米ドルを確保しているのであって、円換算での総額は120兆円以上と言われています。

この外為特会というのは、とにかく政府が「行き過ぎた円安、行き過ぎた円高」になったときに、「為替介入」をするための秘密兵器のようなものです。そして、簡単に使ってはいけない性格のものです。ですが、今回、5月の連休から月末にかけて、円は「1ドル160円を超えるような円安圧力」を受けていました。政府日銀としてはどうしても、これに対抗する必要があり、公表されたところでは、11兆円をぶち込んだそうです。

総額120兆円の中で11兆円を使ったというのですから、ほぼほぼ国家の存亡をかけた戦いですが、結果的に現時点では1ドル159円程度で安定できています。それはともかく、11兆円をかけて「安いときに買ったドルを売って円を買った」ことになります。そして、おそらくは5兆円から7兆円程度の「利益」がキャッシュで受け取れたとされます。

つまり、今回は「外為特会の含み益、つまり実現していない利益」ではなく、本当に実弾を撃ってしまい、実際に「円建てで得たキャッシュの利益」がおそらくは6兆円位あるようです。このキャッシュを使って減税をする、これが今回の高市政権が言う「追加の国債発行は不要」という宣言の裏にはあるのです。

ところで、今回の減税が実現した場合に行き着く先ですが、悲観派が特に懸念するのは、英国の事例です。2022年、当時のリズ・トラス政権は大規模減税を発表しました。すると市場は、「財源が不明確だ」と判断し、「英国債の急落」「ポンド急落」が発生、金融市場は大混乱に陥りました。その結果として、トラス政権は短期間で崩壊しました。

また、日本特有のリスクもあります。先程申し上げたように、日本国債残高はGDP比でみれば先進国最大級です。それを、これまで市場が許容してきたのは、「国内の個人金融資産が豊富」「日銀が国債を大量保有」「他国に比較すると低インフレ」という条件があったからです。

そうなのですが、今後、「さらなる人口減少」「さらなる高齢化」「回復しない生産性」「外国人忌避による労働力不足や社会の混乱」「さらなるインフレ定着」が進めば好条件は完全に帳消しになります。

そうした中長期の問題が明らかである中で、問題は次の一点に集約されます。それは、

「今回の減税は、行き過ぎた円安とイラン情勢による物価高から、一時的に国民の生活を救済するため」

「そして期間は2年に限定し、その減税の財源は、既に5月の為替介入の結果としてキャッシュとして手元にあるので、借金の積み増しは不要」

というストーリーを国際市場が信じるかどうかという一点です。国際市場が信じてくれれば、減税案が審議される中で円が暴落するというのは避けられるでしょう。反対に、国際市場が信じてくれなければ、円安物価高への対策を審議する中でどんどん円が暴落するという悪夢のようなことになります。

これは、どう考えても高市政権の、そして日本の大きな岐路になります。

この記事の著者・冷泉彰彦さんのメルマガ

初月無料で読む

print
いま読まれてます

  • 高市首相「食料品の消費税率1%」で“円の暴落”は回避できるか?日本経済を賭けた“減税ギャンブル”の行方
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け