トランプだけじゃない。北朝鮮を訪問した習近平が恐れを抱いている“もう一人の人物”とは誰か?

 

イランが採る「相手国に負担を強いる」という戦略

ネタニエフ首相にとっては、戦争の継続が政治的生存に直結していますが、一方でトランプ大統領にとっては、戦争終結こそが政治的利益になります。

ここに解決が非常に困難な大きなジレンマが存在します。

【ネタニエフ首相は戦争を続けたい】

【トランプ大統領は戦争を終わらせたい】

アメリカとイスラエルは“特別な”同盟国同士であり、かつ同じ戦争を共に戦っているにも関わらず、それぞれの政治的利益を叶えるための手法は必ずしも一致しておらず、全く逆方向に進んでいることが分かります。

これを見て分かることは、外交において最も難しい交渉は敵との交渉ではなく、味方との交渉であるということです。

現在の米イスラエル関係はその典型と言え、その交渉が順調に進まないことが、イラン情勢とレバノン情勢の解決を非常に難しくしています。

そこにイランの戦略が絡み、さらに状況を複雑にしています。

米・イスラエルとイランが攻撃の応酬を続け、かつイランによるホルムズ海峡の封鎖が行われる中、注目すべきなのは、【イランが軍事的勝利を目指しているわけではない】という点です。

冷静に軍事力だけを比較すれば、アメリカ軍、イスラエル軍、イラン軍(正規軍と革命防衛隊)の間には大きな能力差があり、イラン指導部もそれを明確に理解しているため、イスラエルに対しての意識ははっきりしませんが、少なくともアメリカに対しての軍事的勝利を目的に掲げていません。

だからこそイランは、【相手(アメリカとイスラエル、そしてその仲間たち)に勝つ】のではなく、【相手に負担を強いる】戦略を採っています。

ちなみにこれは交渉でもよく見られる構図で、【力で勝てない側は、相手のコストを引き上げることで、戦いのフォーカス(力点)をずらし、かつ相手の最大の弱点を突く】作戦を取っています。

イランの場合、その手段の中心がエネルギーの流通網の掌握です。

そのために今回、イランは禁じ手ともいえる“ホルムズ海峡の閉鎖”という交渉カードを戦いの場に持ち込み、アメリカとの対峙に乗り出しています。

皆さんもご存じのように、世界の原油輸送の大部分がホルムズ海峡を通過しており、イランによる海峡の封鎖は、中東湾岸諸国にエネルギー資源を依存している日本を含む多くの国々の物流およびエネルギー安全保障に大きな負のインパクトを与えて懸念を増大させ、エネルギー価格の高騰を招くことで、すでに大きな損失を与え、各国で厭戦機運を高めています。

ここで重要なのは、実際にイランがホルムズ海峡を封鎖するかどうかよりも、【イランがいつ何時、ホルムズ海峡を完全封鎖するかもしれない】と各国に思わせ、危機感を募らせることです。

米・イラン間の攻撃の応酬を受け、イランの革命防衛隊はホルムズ海峡の完全閉鎖を発表し、それに加えて、クウェート・バーレーン・ヨルダンの米軍基地に対する攻撃を行うことで混乱を高めています。

ちなみに、皆さんよくご存じのように、市場は可能性だけで反応します。結果として、物流に係る保険料が上がり、輸送コストが上がり、それが各国における物価の高騰に繋がりますし、より直接的には、すでに高騰している原油価格がさらに上昇傾向を見せ、かつホルムズ海峡の完全閉鎖の“うわさ”によって物流ショックが加速し、その結果として世界経済全体に影響が及ぶのは、すでに私たちも経験済みです。

イランは軍事力ではなく、エネルギー市場を戦場に変え、世界経済の要としてのアメリカの信頼性を貶めようとしているのです。

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