「習近平の訪朝」に見え隠れする中国の不安の存在
そのような中、大国の中で唯一まだ戦争に参加していない中国が不安を抱いています。
今週最も重要な出来事を一つ挙げるなら、私は中国の習近平国家主席の訪朝を選びます。その理由は、見え隠れする中国の不安の存在です。
中国は一体何を恐れているのでしょうか?
1つは「いつアメリカが中国に牙をむいてくるか」という見えない不安です。先述の通り、アメリカのトランプ政権はイラン情勢とイスラエル絡みの中東情勢に注意もエネルギーも注いでおり、その結果、アジアの守り(つまり対中圧力)を担うはずの戦力はペルシャ湾に縛り付けられ、アジア太平洋地域は手薄になっています。
日本を含め、アジア太平洋地域には伸び続ける中国の軍事力とプレゼンスに単独で対抗できる存在はなく、それを一つ一つ確認するかのように、中国はアジア諸国のレッドラインを試すべく、威嚇行動を繰り返しています。“有事”として警戒されている台湾海峡情勢も例外ではありません。
アメリカのルビオ国務長官は台湾に対する武器販売を再開すべきと発言して、中国の動きをけん制してみる構えを見せていますが、アメリカ軍の支持がセットでついていない台湾の軍備増強は恐れるに足らずと中国の動きを抑制するには至っていません。
しかし、中東情勢が何らかの形で落ち着けば、トランプ政権のナイフの先は中国に向けられるのではないかという恐れを常に抱いており、アメリカ対策においては、強気の姿勢を維持するとともに、動きや思考が全く読めないトランプ大統領の機嫌を損なうことが無いように、過度な刺激は避けています。
その点では、今回の北朝鮮訪問と、中朝関係(血盟)の確認という動き、そして名指しはせずともアメリカを共通の脅威と認識している発言を公表したのは、アメリカへの牽制という側面以外に、ロシアに対するメッセージでもあると考えられます。
言い方を変えると中国はロシアに対しても恐れを抱いているものと考えられます。それは、すでにウクライナを舞台にしたロシアと北朝鮮の急接近のように、両国の関係が急速に深まれば、中国の対北朝鮮影響力が低下する可能性があります。
それは、中国にとって重要な緩衝地帯である北朝鮮を失うことにも繋がりかねません。
ゆえに今回の訪朝は、「北朝鮮を中国陣営につなぎ留めるための最高レベルでの外交」という意味合いが強かったと考えられます。
よく【中露朝連携】という言葉が使われますが、現実はもっと複雑です。
当たり前と言えばそうなのですが、中国には中国の利益があり、ロシアにはロシアの利益がある。そして、北朝鮮には北朝鮮の利益があるわけで、三者はその利害が一致するなら協力することもありますが、そうでない場合には競争もしています。
北朝鮮は三つ巴のバランス状況を巧みに利用し、中国とロシアを天秤にかけながら、自らの戦略的価値を最大化しようとする【小国外交・中間国外交の典型的な生存戦略】の一つです。
今回の訪朝で中国は、日米韓による中国包囲の圧力に対抗するにあたり、北朝鮮の戦略的重要性を認識し、北朝鮮の核保有を実質的に黙認する方針転換を行ったことで、アジア太平洋における自国の影響圏の拡大も図ることになり、一気に中国のプレゼンスが高まる方向に進んだと見ています。
そのことで、私はアジアの地政学図が大きく変わる節目に直面していると考えています。
現在、アジアは米国の相対的プレゼンス低下や中国の影響力拡大に加え、ロシアの東方シフトや北朝鮮の存在感増大を受けて、その立ち位置・あり方を急ぎ検討し、実行に移さなくてはならない段階に来ています。
私は今後のアジアが進む未来には三つのシナリオがあると考えています――(メルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』2026年6月12日号より一部抜粋。全文をお読みになりたい方は初月無料のお試し購読をご登録下さい)
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