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鮮明化する「中東地域における戦闘拡大」の兆し

ところで、イラン問題を理解する上で重要なのが、イランが掲げる【抵抗の枢軸(Axis of Resistance)】という考え方です。

私たちが目にする“国際関係”ではしばしば、イラン、ヒズボラ、フーシー派、イラクのシーア派民兵などを別々の主体として扱いがちですが、実際には、これらは緩やかなネットワークとして機能し、一種の相互安全保障体制を築いているのが現実です。

そのため、イランへの圧力が強まればヒズボラが動いてイスラエル攻撃を行い、ヒズボラが攻撃されればイエメンの親イラン組織フーシー派が反応して、紅海の緊張を高めてイスラエルが対応を強いられるという構図が形成され、こうして戦線が連結され、アラビア半島全域にわたる一連の対イスラエルの包囲網が形成されていきます。

それゆえに、今週に入って親イランのイエメンのフーシー派とイランが協力して紅海の封鎖も視野に入れ、相手にさらなる負担を強いる作戦を立てているようです。

イラン革命防衛隊コッズ部隊によると「ホルムズ海峡からバベルマンデブ海峡、そしてペルシャ湾から紅海にかけて、新しい抵抗の安全保障ベルトを築く」という計画が発表されていて、この試みにフーシー派が参画するものと思われます。

この海峡閉鎖のベルトが成立することになると、ホルムズ海峡からの迂回を強いられている世界のエネルギー資源物流は“代替案”を失い、実質的に麻痺することが予想されます。

特にバベルマンデブ海峡はアジア諸国行きの原油の多くが通過することに加え、現在、ホルムズ海峡の封鎖に伴う迂回輸送路の要でもあるため、ここが親イラン勢力のコントロール下に置かれたら物流は確実に滞ることになります。

アメリカとイスラエルの利害が必ずしも一致していない現状において、抵抗の枢軸国が実行に移すか、または脅している内容を未然に防ぐことができるかは、非常に微妙です(アメリカのペンタゴンに勤務する友人曰く、「だから今、アメリカはイランにサイド攻撃を加えている」とのことでしたが、トランプ大統領の発言を聞く限りは、実際にはどうだかわかりません)。

この【抵抗の枢軸】によるイスラエルへの攻撃およびアメリカの権益に対する挑戦の高まりを見ればわかるように、中東地域における戦闘拡大の兆しが鮮明になってきています。

イランとアメリカ、イスラエルの三つ巴の戦争に加え、フーシー派とイスラエルの攻撃の応酬、イスラエルとヒズボラの戦闘の激化、ガザとヨルダン川西岸地区におけるイスラエルとパレスチナの戦い、そしてUAEとイランの戦いなどが同時並行で起き、地域が不安定化しているのは事実です。

混乱の大きな要因となっているのが、イスラエルによる“ヒズボラ掃討”という大義名分の下で続けられているレバノンへの攻撃と、停戦合意に違反する一方的なレバノン南部でのイスラエル軍の駐留延長です。

現在のレバノン情勢も抵抗の枢軸の文脈で見る必要があり、決して中東地域において対イラン戦争に続く【第二戦線ではないこと】を理解しておく必要があります。

皆さんもご存じの通り、ヒズボラは単なるレバノン国内勢力ではなく、抵抗の枢軸というイランの地域戦略の重要な一部であると同時に、多くのレバノン国民の支持を得ている有力な政治勢力でもあります。半ば無政府状態と言ってもよかったレバノンの内政において、ヒズボラは国民を庇護するだけでなく、教育や労働の機会を与え、公衆保健を充実させ、レバノンの日常を作り出していると言っても過言ではない存在です。

私たちが目にする報道では「ヒズボラの存在ゆえにレバノンが攻撃されるのだ、と国民はヒズボラに否定的である」といった論調が目立ちますが、実際には「レバノンに攻撃を仕掛け、レバノン国民の権利と安心を脅かしてきたイスラエルから、レバノン国民を守る存在がヒズボラ」という認識が強化されているのが現状です。

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