イランを軸とする「抵抗の枢軸」の背後に存在する国々
やっとできた現政権は、トランプ政権とネタニエフ政権からの支援を得て成り立っているという背景があるため、表向きではイスラエルとの和平に前向きで、かつトランプ大統領のアメリカにも“従順”な感じを醸し出していますが、レバノン国民の支持を得ておらず、レバノン国民は、程度の強弱の差はあるものの、ヒズボラ支持で揃っています。
イスラエルは自国の安全保障と生存の確証のために、レバノンを弱体化したいと考え続けてきましたが、そのためにはヒズボラの弱体化と国民からの引き剥がしが必要だと考えて、工作活動を強めるとともに、レバノンへの攻撃を激化させることで、国民のヒズボラ離れを起こしたいという目的が、戦略の核にあります。
それに対して、ヒズボラはイスラエルへの抑止力を維持して、レバノンがイスラエルに蹂躙されることを許さず、そのための闘争を続ける必要があると認識して、イスラエルからの度重なる攻撃を受けても怯まず、まるでアメーバのように広域にネットワークを張り巡らせて、イスラエルに対する抵抗網を堅持しています。
イスラエルを国家安全保障および地域の安定の最大の敵と考えるイランは、抵抗の枢軸の中心を構成するヒズボラを失いたくないと考えて、ヒズボラに武器弾薬を与え、資金支援も行って、対イスラエル戦線の最前線を任せています。
私たちが“レバノン情勢”と呼ぶ紛争案件は、この三者(イスラエル、レバノン、イラン)の利害が複雑に絡み合っている状況だと見ることが出来ます。
そして、このイランを軸とする抵抗の枢軸の背後には、通称、CRINK(クリンク)と呼ばれる国々のネットワークが存在します。
これは中国(C)、ロシア(R)、イラン(I)、そして北朝鮮(NK)の連携を指す表現で、最近、アメリカ政府内の安全保障界隈でよく用いられるものですが、これらの4か国とその仲間たちの間で、相互に軍事的な技術や知見の共有が行われています。
弾道ミサイル技術をはじめ、恐らく核兵器の開発における協力も含まれる複次的な繋がりですが、現在、同時進行で進む各地の戦争・紛争において、CRINKの協力例として最近特に注目されているのがヒズボラによる有線ドローンの実戦投入です。
有線ドローンは、その名前の通り(無線ドローンと違い)、ジャミング(電波妨害)による影響を受けないため、イスラエルなどが得意とする従来の電子戦では無力化しにくく、小型で探知も困難なため、イスラエルが迎撃できず、結果としてイスラエル各地での多くの損害に繋がっています。
おまけに数十キロメートルに及ぶ有線での運用が可能で、かつドローンに精巧なカメラが搭載可能なため、離れた位置から映像を見つつ、確実にターゲットをしとめるという、恐ろしい技術がすでに投入されています。
現在、ヒズボラが用いている有線ドローンは、中国製のものが多く、実はウクライナ軍が対ロシア戦線で投入されているものと同様のものと思われますが(ロシアも対ウクライナ戦で投入し、ウクライナの防空網を突破して、各地で損害を与えている)、それがイランにも提供されていると思われ、今後、ホルムズ海峡におけるアメリカとの対峙にも投入される可能性があります。
安価でありつつ、高い効果を発揮する有線ドローンのような軍事技術の進歩が、あらゆるところで戦場のルールを変えています。皮肉なことに、ウクライナ戦争で起きているドローン革命が、中東にも広がり始め、これまでの戦力差による勝敗の決定という図式を変え、小が大を制しかねない状況を作り出し、かつ民間人の犠牲を増やすきっかけになってしまっています。
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