習近平もプーチンも国連総会に現れず。主要国が「多国間の舞台」より“二国間の取引”を優先する由々しき世界の現状

 

【1-1.「無法者」と呼ばれた米国】

同じ9月22日、トランプ大統領が国連総会の演台に立ちました。イランについては軍事行動を正当化し、「交渉か、殲滅か」という二択を突き付ける一方で、米国とイランの当局者がニューヨークで協議したことにも触れ、硬軟を使い分けていました。

ICCについては「邪悪な人々だらけ」と非難し、全加盟国に脱退を呼び掛けています。グリーンランドについては、デンマークおよびグリーンランド自治政府と「前例のない合意に達した」と述べ、「非常に大きな軍事基地を二つ建設する」と表明しました。キューバを「破綻国家」と呼んだ場面ではキューバ代表団が席を立ち、イラン代表団の大半も演説中に退席しています。

国際危機グループ(ICG)は9月21日に発表した特別報告で、トランプ政権下の米国は、欠点はあっても国際法秩序の擁護者だった存在から「公然たる無法者」へと変わったと評しました。

ICGの診断によれば、米国は多国間体制を否定こそしていないものの、PKOの縮小を求め、拠出金の支払いを遅らせ、イデオロギー的な主張を押し付けることで、国連に深い傷を負わせています。

ICGはさらに、安保理が米中ロの「二線級の案件」で折り合う場としては機能している一方、米イスラエル対イランの戦争、ウクライナ、スーダンという最重要案件では「動けないこと」でしか存在感を示せていないと指摘しました。

この指摘は、紛争の現場にいた人間の実感と重なります。

私がイラク戦争後の占領統治期に国連側の立場で関わったとき、米国主導の連合国暫定当局(CPA)と国連の間には、正統性や主導権をめぐる摩擦が絶えませんでした。それでも当時の米国は、国連の看板を必要としていました。いまの米国は、その看板すら要らないと言い始めているように見えます。

【1-2.資金が止まると、調停も止まる】

理念の対立以上に深刻なのが、お金の問題です。

米国は9月11日と15日に計8億2,700万ドルの分担金を支払いましたが、なお約42億ドルが未払いのままです。さらに11億ドルをPKO予算に送る計画があると外交筋は伝えていますが、実際の支払いも公式の発表もまだで、未確認の段階にとどまります。

その影響は国連本体にとどまりません。アジア太平洋リーダーシップ・ネットワーク(APLN)のカールソン、ティレマン両氏の論考によれば、IAEA(国際原子力機関)の年間予算の約45%を米国と中国の2カ国で負担していますが、いずれも支払いが遅れがちです。グロッシ事務局長は9月中旬のIAEA総会で、イランでは約6カ月間にわたって現地査察ができていないと述べ、「深刻な拡散懸念」を表明しました。

イランの戦争を終わらせるには、60%まで濃縮されたウラン約440キロの行方を確かめ、瓦礫に埋もれた核施設を掘り起こして査察する必要があります。その仕事を担うはずの機関が、資金不足で首が回らないのです。

「査察を求める大国が、査察の費用を払っていない」

これが、いまの核不拡散体制の偽らざる姿です。

開発の分野でも状況は同じで、OECDによれば、2025年の政府開発援助は実質で前年比23.1%減と、統計史上最大の落ち込みを記録しました。

戦争にお金が流れ、平和と開発からお金が引き揚げられています。

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