【2-1.バベルマンデブ海峡に伸びた手】
フーシ派は9月3日から攻勢を強め、イエメン西岸の紅海沿岸の大半を掌握したとされます。港湾都市モカを押さえた後、イエメン政府筋などによれば、フーシ派は9月11日、バベルマンデブ海峡の中央に浮かぶペリム島に進出しました。政府軍の撤退後、ほとんど抵抗を受けずに上陸したと伝えられていますが、当初の情報はイエメン政府筋によるもので、確認にはしばらく時間がかかりました。
ICGのアフメド・ナージ氏は「フーシ派が今や海峡の新たな当局であり、誰が通り、誰が通れないかを決めるのは彼らだ」と評しています。
フーシ派は紅海を行き交う船舶に危険はないと述べる一方で、サウジアラビアの船舶は対象外だと明言しました。ホルムズ海峡をイランが、バベルマンデブ海峡をイランと近いフーシ派が押さえるという構図は、中東の原油の出口の両方に、同じ側の手がかかったことを意味します。
9月19日未明には、フーシ派がサウジアラビアの首都リヤドの「重要施設」と、紅海側の積み出し港ヤンブーにあるサウジアラムコの施設を、ミサイルとドローンで攻撃したと発表しました。
サウジ主導の連合軍は、リヤドに向かった弾道ミサイルを迎撃し、被害はなかったと発表しています。一方、ロイター通信はリヤドの空港付近で黒煙が上がったという目撃証言を伝えており、情報は食い違ったままです。
すでに8月には南部ジーザーンのアラムコ製油所が繰り返し被弾して操業を止め、9月8日にはアブハやジーザーン、ハミース・ムシャイトなどの施設が攻撃されて73人が負傷したと、サウジ政府は発表しています。ただ、SNS上で広く拡散された「アブハ空港」や「ハミース・ムシャイトの空軍基地」の被害は、フーシ派側の主張にとどまっており、事実関係については慎重な確認が必要です。
9月23日には、今度はサウジアラビアがモカを空爆し、フーシ派側の発表では民間人6人以上が死亡しました。翌24日には、サウジ主導の連合軍が、ヤンブーと西部ターイフを狙った弾道ミサイル6発を迎撃したと発表し、フーシ派は南部ジーザーン州に数十発のミサイルとドローンを撃ったと主張しました。
報復が報復を呼ぶ連鎖に入りつつあります。
【2-2.東西パイプラインを撃ったのは誰か】
サウジアラビアにとって最大の打撃は、9月10日に東西パイプラインが止まったことでした。全長約1,200キロのこのパイプラインは、ペルシャ湾岸の油田から紅海側のヤンブー港へ原油を運ぶ、ホルムズ海峡を迂回するための生命線です。
ここで一つ、事実関係を正確にしておく必要があります。
このパイプラインへのドローン攻撃は、フーシ派によるものではありません。サウジ当局は「イラクから飛来した複数のドローン」による攻撃だと非難し、イラク政府も発射地点が南部のマイサン県だったと認め、現地の司令官を解任しました。ゆえに、イランの支援を受けるイラクのシーア派民兵が関与したとみるのが自然です。
南からはフーシ派、北からはイラクの民兵という、二方向からの圧力がサウジアラビアにかかっていることになります。
国際エネルギー機関(IEA)によれば、サウジアラビアの原油供給量は8月の時点で「30年以上ぶりの低水準」に落ち込みました。9月22日、ロイター通信は関係筋の話として、東西パイプラインが再稼働したと報じましたが、24日の時点でヤンブーでのタンカーへの積み込みはまだ再開しておらず、圧力試験を経て数日以内の再開が見込まれています。当面の目標は日量約400万バレルで、日量700万バレルの全面復旧には最大で6週間かかると見込まれています。
しかし、まだ楽観視することはできません。仮に復旧しても、フーシ派とイラクの民兵という二つの脅威が消えるわけではないからです。
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