習近平もプーチンも国連総会に現れず。主要国が「多国間の舞台」より“二国間の取引”を優先する由々しき世界の現状

 

【1-3.次の事務総長は「何ができる人」であるべきか】

グテーレス事務総長の任期は2026年12月31日までで、後任選びは大詰めを迎えています。

9月18日の安保理での第3回の非公式投票では、コスタリカのグリンスパン氏とガイアナのロドリゲス=バーケット氏が支持を集めました。支持が伸びなかったチリのバチェレ元大統領は、9月19日から20日にかけての報道によれば事務総長選からの撤退を表明し、現在、候補は7人に絞られています。

ただ、誰が次の事務総長になるか以上に大切なのは、次の事務総長が「何をできる人物なのか」です。

ICGは次期事務総長に、合意できる領域を探し出す実務的な仲介者、資金削減のなかで中核機能を守る組織の改革者、国際法と国際協力の価値を訴え続ける擁護者という、三つの役割を求めました。

私はこの三つに、もう一つ付け加えたいと考えます。それは、私が仕えたコフィー・アナン事務総長のように、大国に「使われる」のではなく、大国が「使いたくなる」調停者であることです。

調停の世界では、仲介者の価値は権限の大きさではなく、当事者がその人を通さないと得られないものを持っているかどうかで決まります。

それらは、「情報、信頼、そして面子を保ったまま譲歩できる出口」です。グテーレス事務総長が挙げた「声を上げる力」と「人を集める力」は、実はこの出口をつくるための道具でもあります。

調停官として私が次の事務総長に見るのは、演説のうまさではありません。対立する当事者が、自分の約束をその人に「預けてもいい」と思えるかどうかです。

【2.約束の履行を保証する者がいない-紅海の第二戦線とメッカ協定】

国連総会の議場で言葉が交わされている間にも、中東の戦線は広がっていました。

英フィナンシャル・タイムズのギデオン・ラックマン氏は、米国とイランの戦争には三つの次元があると論じています。「戦場での戦い」、「経済戦争」、そしてどちらの物語が人々に信じられるかという「ナラティブの戦い」です。そして、いまはその三つがいずれも米国に不利な方向に動いていると指摘しました。

私もこの見立てに同意します。

2月28日に米国とイスラエルが攻撃を始めたとき、両国は圧倒的な軍事的優位によって短期で決着がつくと信じていました。しかし、イランは最初の攻撃に耐え、ホルムズ海峡を封鎖し、湾岸諸国に反撃しました。

米国は海峡を軍事力で完全に再開する容易な手段はないと判断し、イランの港湾を封鎖する経済戦争に軸足を移しています。米軍の護衛によって、海峡の輸送量は一時、戦前の約3分の1まで回復し、原油価格も1バレル100ドルを下回る水準に抑えられていました。

その計算を狂わせたのが、イエメンのフーシ派でした。

この記事の著者・島田久仁彦さんの新創刊メルマガ

初月無料で読む

print

  • 習近平もプーチンも国連総会に現れず。主要国が「多国間の舞台」より“二国間の取引”を優先する由々しき世界の現状
    この記事が気に入ったら
    いいね!しよう
    MAG2 NEWSの最新情報をお届け