レッドラインを越えた米国とイスラエル。イラン攻撃が引き起こす「世界大戦ドミノ」という最悪シナリオ

Washington,dc,,United,States,,April,7,2025,,President,Donald,J,Trump
 

各国を巻き込みながら拡大の気配を見せる中東の軍事衝突。アメリカとイスラエルによるイラン攻撃をきっかけに、地域紛争がより大きな対立へと発展する危険性も指摘されています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、イラン攻撃に至る外交交渉の経緯と、背後にある中東の複雑な地政学的構図を解説。その上で、今般の軍事行動が世界各地の紛争を連鎖させ、世界大戦へと発展する可能性を憂慮しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:レッドラインを越えたアメリカとイスラエル-グランドデザインなき過信による攻撃が引き起こす“核”を用いた世界大戦に向けたslippery slope

レッドラインを越えた軍事行動の代償。アメリカとイスラエルが開いた「危険な戦争の連鎖」

「ジュネーブでの会議ですが、無期限で休止になるため、今回の渡航は止めて、一旦スタンバイ状態で待機いただけますか?」

先週号のメルマガが配信された頃に連絡が入ってきました。その後、アメリカとイスラエルによるイランへの大規模攻撃の報が入り、最高指導者ハメネイ師が殺害されたかもしれないという情報も入り、「これは大変なことが起きた」という感覚を抱きました。

ハメネイ師については、残念ながら今回の攻撃での死亡が確認されましたが、昨年6月に行われた12日戦争直後にハメネイ師を中心に“ハメネイ師が死亡した際に行うべき一連の行動”が決められ、革命防衛隊に指示書が配布され、中央集権型のオペレーションではなく、各部隊のトップに現場での決定権を与えるという権限移譲まで行われていたとのことで、それが今、私たちが“見ている”イランによる大規模かつ迅速な報復攻撃だと考えます。

議会にも諮ることなく、国連安全保障理事会での協議・決議を経ることなく、イスラエルと共にイランへの大規模攻撃を実行し、ハメネイ師の排除まで行ったことは、明らかな国際法と言わざるを得ませんが、トランプ政権もネタニエフ政権も明らかに国連軽視を貫いていること以外に、なぜこのような蛮行・愚行に至ったのかという理由は見つかりません。

それはトランプ大統領が“理由と正当性”を尋ねられるたびに回答が異なることからも分かります。当初は「イランが弾道ミサイル発射の準備をしており、同盟国イスラエルはもちろん、アメリカ自身にとっても安全保障上の危機が差し迫っていたため、pre-emptive actionとして“自衛的に”先制攻撃を行った」と“安全保障上の差し迫った危機”を理由にしていましたが、様々な衛星画像などから「イランが弾道ミサイルを発射しようとしていた兆候が見当たらない」ことが分かってくると、当初は否定していたregime change(体制転換)を主だった理由に挙げるようになりました。

確かに年初からイラン全土において反体制デモが活発化し(背後にCIAやモサドの存在が指摘されている)、イラン政府はその弾圧において数千人から数万人とも言われる市民・参加者を殺害したと言われているため、現在のハメネイ師をトップとするイスラム法による厳格な統治に綻びが出てきていることは明らかだと考えますが、トランプ大統領が期待したようなイラン国内での独自の体制転換・クーデターは勃発せず、ある意味、緊張が漂いつつも、反米・反イスラエル姿勢で団結しているイランが継続していました。

今年初めごろはまだサウジアラビア王国との関係改善と反イスラエルでの共同歩調も順調で、アメリカとイスラエルがイランを攻撃するかもしれないとのうわさが広がった際も、サウジアラビアを中心に、カタールやUAEなどが「アメリカ軍およびイスラエル軍の航空機による自国の空域通過を許さない」と明言し、米・イスラエルvs.イランとアラブ諸国の構図が出来ており、アラブ諸国側は「米・イスラエルが主張するイランによる差し迫った危機および核兵器開発の兆候はなく、問題はイスラエルが相変わらず蛮行を止めないことにある」という共通認識を有していました。

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