数え上げればきりのない「予測不能」な言動で、世界を混乱させ続けるトランプ大統領。とりわけイスラエルとともに行った対イラン攻撃は、エネルギー市場や各国の安全保障環境に大きすぎる影響を与える結果となっています。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の「無敵の交渉・コミュニケーション術」』では元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、イラン攻撃の背景にあるアメリカの世界戦略と中東情勢の複雑な構図を解説。その上で、この軍事衝突がアジアや欧州を含む各地域の紛争を連鎖させる危険性を指摘しています。
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/メルマガ原題:崩れるアメリカの世界覇権と存亡に対する賭けに出たイスラエル-揺れるアラブの結束と紛争の連鎖に向けたぎりぎりの攻防
「アメリカは本当に大丈夫か?」という懸念。崩れる米国の世界覇権と存亡に対する賭けに出たイスラエル
「アメリカは本当に大丈夫か?」
アメリカとイスラエルによる対イラン攻撃が行われ、イランによる大規模な報復攻撃が始まってから2週間が経とうとしていますが、未だに出口が見えず、双方ともに攻撃を継続し、その結果、世界中に混乱が広がっています。
イランによる周辺国への攻撃は、アメリカ軍基地に対する攻撃が主眼でしたが、UAEのドバイ国際空港への攻撃をはじめ、サウジアラビア王国やカタール、UAEなどの石油・天然ガス施設も攻撃され、カタールに至ってはフォース・マジュール(不可抗力により契約の履行が出来ない状況)を宣言し、UAEも油田の操業を無期限で停止するなど、ホルムズ海峡の閉鎖と併せ、世界のエネルギー市場に大混乱をもたらしています。
エネルギー資源のほとんどを中東諸国に頼る日本も例外ではなく、IEAの加盟国と共に原油の備蓄の放出を実行する旨公表し、来週以降、合計4億バレルの原油備蓄が放出されることになっています。
ただ、ニュースでも伝えられているように、ガソリン価格の高騰は避けられないばかりか、石油を原料とする化学製品の製造・供給にも大きな影響を与えることから、戦争の激化は確実に世界経済の健全さを蝕んでいくことになります。
悪影響を被るのは、攻撃を仕掛けたアメリカも例外ではありません。アメリカ自体は国内のシェールオイルおよびガスのおかげでエネルギー面では供給にはさほど問題がないとされているものの、国民の大きな関心事であり、政権のパフォーマンスおよび政権への支持率を左右するガソリン価格はすでに高騰しており、アメリカ国内における対イラン攻撃への支持も低下の一途を辿っています。
当初は早期にイランを屈服させ、ベネズエラに続き、イランの原油も掌握して、原油・天然ガス価格を下げるプレッシャーを通じてアメリカの世界覇権の拡大と維持を目論み、かつどっちつかずのアラブ諸国や、ロシア・ウクライナ戦争の当事者であるロシアを揺さぶり、かつ原油に依存する中国へのプレッシャー材料としようと考えていたようですが、逆にoil & gasのprice controlを失い、国内での支持を失いつつあるようです(原油市場を支配し、オイルマネーによって言うことを聞かせるという、アメリカの旧来のコントロール手法はもはや通用しないようです)。
トランプ大統領が今週に入って、頻繁に「予定よりも作戦は早く進んでいる」とか「終結は近い」という発言を繰り返して、原油価格の過剰な高騰を抑え、かつ国内における支持率の低下に歯止めをかけようと試みているようですが、実際に具体的なタイムラインが示されることもなければ、ホルムズ海峡でタンカーを米艦隊が護衛するというニュースを流してみても、実際にはそのようなことは未だに起きていないことなどが露呈し、状況はあまり好ましくない方向に行っているように見えます。
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